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宇佐見結花さん(デザイナー)
「ディオールと私」(2014年)

もっと人間くさく 一流ブランドに学ぶ

 

 クリスチャン・ディオールのデザイナーにラフ・シモンズが就任するところから始まり、縫い子さんたちと一致団結して洋服を作り、コレクションを成功させるまでを描いたドキュメンタリー映画です。一流の職人さんたちが一着一着手縫いする中で、色々な葛藤が映し出されていきます。世界的に有名なブランドでも、人間くさい仕事をしているのだな、と思うのです。


 昨年、パリ・ファッションウィークに初めて参加することになり、渡航前、自分を奮い立たせるためにこの映画を繰り返し見ました。特に、コレクション本番の前日になってなお刺繍(し・しゅう)を直しているシーンは衝撃的でしたね。最後まで自分の仕事をやり遂げたい、一生懸命やり続けるのは恥ずかしいことじゃない。そう学びました。うちのスタッフもこの映画が大好きで、「私はディオール! と思ってやっています」と言いながら手縫いの作業をしています。


 生活の8割9割は仕事なので、たまに仕事から離れたいなと思う時があるんです。でもこの映画を見ると、「もっと仕事がしたいな、もっともっと」という気持ちがすごく強くなるんです。

 

 コレクションの前日に突然シャンパンタイムが始まるシーンも好き。作業は大変でも、楽しく仕事をしている空気が印象に残っています。

 ディオールのように完成されたブランドでも人間くさい仕事をしているのだから、私のできたてのブランドなら、もっと人間くさくやっていい、それは間違っていないんだなと思えます。

(聞き手・斉藤梨佳)

 

 
 監督=フレデリック・チェン

 製作国=フランス    

 出演=ラフ・シモンズ、ピーター・ミュリエほか

 

 うさみ・ゆか 1987年生まれ。デザイナー。2019年にアパレルブランド「JENNE」オープン。表参道、日本橋(期間限定)、京都、名古屋に店舗あり。  

 公式ホームページ
 https://www.parisjenne.jp/

 Instagram
 https://www.instagram.com/jenne_official/

▼宇佐見結花さんロングインタビューはこちらからお読みいただけます

https://www.asahi-mullion.com/column/article/dmovie/5992

(2024年3月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)