読んでたのしい、当たってうれしい。

現在
66プレゼント

明円卓さん(クリエイティブディレクター)
「インサイド・ヘッド」(2015年) イラスト・佐々木日菜さん

違う人生に共感 うまれる優しさ

 休日の土曜日は早起きをし、朝イチに映画館へ行くーー。そんなルールを自分に課していた電通勤めの若手社員のころに出会って、大好きになった映画が「インサイド・ヘッド」です。

 この物語の主人公は、ライリーという11歳の女の子でもあるし、その子の頭の中の感情たちでもあります。ライリーが成長していく過程でヨロコビやカナシミやイカリを知って、その記憶は積み重なり、やがて性格となる。ヨロコビに触れる機会が多い人は楽観的な、カナシミの出来事が多い人は悲観的な性格になる。「なぜ人はみんな全然違うのだろう」という問いに、「だってみんな歩んできた人生が違うのだから」と、とした答えをくれたのはこの映画でした。

 いまの仕事のルーツも実はここにあります。独立してからは「やだなー展」とか「いい人すぎるよ展」と題し、感情のあるあるをテーマに展覧会をプロデュースしてきました。「共感」に目が行きがちですが、「人のことなんて分かりっこない」と伝えているつもり。友達とか恋人とか、一緒に来場した仲間内でも「超分かる」と「全然分からない」に意見が分かれるんですよ。みんなバックグラウンドが違うので。誰かの感情を想像することで、共感が生まれて、優しくなれたらいいですよね。

 イラストは、仕事を一緒にしているイラストレーターに描いてもらいました。ぼく、絵が全く描けなくて。いつもハットをかぶっているので、「頭の中が感情になっていたら面白そう」とイメージを伝えました。

(聞き手・島貫柚子)

 

  
   監督ピート・ドクター   

 製作国=米

 声優(英語/日本語)=エイミー・ポーラー/竹内結子、フィリス・スミス/大竹しのぶほか

  みょうえん・すぐる 1989年生まれ、北海道出身。2014~20年に電通勤務。退社後に「kakeru」を設立し、様々な企画展をプロデュース。

 

 

 

(2024年7月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)