野武士の略奪におびえる百姓たちに雇われた7人の侍たちが、身分差による確執を打ち破りながら、野武士の襲来から村を守るアクション映画です。今年が公開70周年なんですね。そんなに昔なのに古さを全然感じさせない。驚きです。
初めて見たのは数年前。時代劇を見ること自体が初めてだったのと、約3時間半という長尺に少し腰が引けましたが、とても面白く、あっという間に見終わってしまいました。悲しませ方が素晴らしいというか、キャラクターの表情と感情の描写がコメディーチックで見やすくって。今まで見た白黒映画で一番白と黒が美しいと感じました。
生き残った侍たちが墓山の前でたたずむ場面は目に焼き付けられましたね。戦いを終えて、田植えの歌を歌いながら日常に戻った百姓たちの意地の強さやしぶとさと、仲間から犠牲を出してしまって「今度もまた負け戦だったな」とつぶやく侍の対比が見事に描かれていました。結末が一目でわかり、すごく象徴的でした。
人が死ぬシーンや人間関係の描写は淡々としていて諸行無常を感じ、人間の営みをあくまで自然の一部と捉えている監督の視点の広さにも引きつけられました。
侍と百姓が一丸となって戦う様が印象的だったので、彼らの理念を描ければな、と。豪雨の中、刀の刃をぼろぼろにしながら戦い抜く姿を描きました。刃こぼれの数は道半ばで倒れた侍たちの数と同じにしています。亡くなった侍たちの墓山が刀の波紋のように見えたので、仲間の死を背負って戦う侍の刀に表現しました。
(聞き手・片野美羽)
監督・製作=黒澤明
共同脚本=橋本忍ほか 出演=三船敏郎、志村喬、木村功、加東大介、宮口精二、稲葉義男、千秋実、津島恵子ほか
おく 2000年生まれ。イラストレーター・漫画家。22年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」公式サイト・台本の表紙イラストを担当。最新作「日本昔噺選集 梅花の想い人」(KADOKAWA)「乙女の本棚 藪の中」(立東社)が発売中。
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