多摩美術大生だった二十歳ごろ、ふら~っと入ったシネコンで泣いている自分がいました。映像の美しさもさることながら、「現実と向き合うも夢を諦めきれず、また挑戦してしまう」主人公に深く共感したんです。
元パイロットの主人公クーパーは、地球がひどい食糧難でもトウモロコシ農園を続けたくない。幼い娘と息子を地球に残し、人類が移住可能な惑星探しのミッションに出る。クーパーは、若い頃に一度諦めたことをずっと引きずっているタイプだから、夢だった宇宙に行きたかっただけのようにも見える。「ワクワク」70%、「人類を救う」30%みたいに好奇心が勝っていたと思うんです。
ところが、何十年もの地球時間をロスして、地球から届いていた子どもたちからのビデオレターを見て、失ったものを実感する。肩を震わせて泣く姿にこちらもつられてしまう。娘のマーフがクーパーと再会するシーンで、結局、おばあちゃんになるまで父親と接していなかったなんて想像するだけで泣かせます。わたしも進学のために北海道から上京していたので、家族と離れる切なさはよく分かる。イラストレーションは、遠く離れた父と娘が何十年もお互いを信じ、行動し続けている姿を表現しました。
数年前、父の誕生日に腕時計を贈ったんです。この映画に登場し、モールス信号を伝えるハミルトンのモデルを。喜んでもらえました。その後、自分も欲しくなっているのですが、おそろいになるのはなんとも気恥ずかしくて、まだ買い渋っています。
(聞き手・島貫柚子)
監督=クリストファー・ノーラン
制作国=米 音楽=ハンス・ジマー 出演=マシュー・マコノヒー、マッケンジー・フォイほか
|
▼「インターステラー」ができるまで