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えがしらみちこさん(絵本作家)
「スタンド・バイ・ミー」(1986年)

 12歳の男の子4人組が、ひと夏の冒険の旅へ。線路伝いにひたすら歩く姿がとても印象的です。
 映画を初めて見たのは小学5年の頃。「死体を探す」という旅の目的も劇中の描写も何だか怖くてあまりピンときませんでした大人になってから再び見て、そのイメージは一転。彼らの旅はほんの2日間ですが、とても濃密だと思いました。ぱっと輝いた瞬間に消えてしまう花火のようです。
 4人は性格も家庭環境も違うのに、とても仲良し。秘密基地に集まって軽口をたたき、旅の夜には泣きながら打ち明け話をする。互いに認め合っていることが伝わってきます。
 旅はわいわい楽しいばかりでなく、ちょっと切ない。彼らは不満や寂しさをのみ込んでいたり、小さな町に息が詰まっていたり。どこか遠くへ行きたいという思いがあったのかもしれません。
 そんな旅にも、4人の濃密な関係にも終わりが訪れます。映画は、大人になった主人公が回想する形で進み、その後4人は別の道を歩み始めたことも語られます。
 今年12歳の娘を見ても、大人への入り口に差しかかっているなと感じます。乳幼児期は「早く歩かないかな」「おしゃべりしないかな」と次のゴールを見がちでしたが、その時代が懐かしくてさみしい。柔らかい頰や手を思い返しながら絵本を描くこともあります。渦中にいる時は夢中だったりつらかったりして気づかないけれど、振り返ると輝いて見えるものですね。
 「あの夏」には戻れない。だからこそ、ずっと心にとっておきたいのだと思います。
(聞き手・木谷恵吏)

 

 
 監督=ロブ・ライナー

 製作国=米    

 出演=ウィル・ウィートン、リバー・フェニックスほか

 1978年、福岡生まれ。主な作品に「あめふりさんぽ」「なきごえバス」や、「せんそうしない」の絵(文・谷川俊太郎)など。静岡県三島市在住で、絵本専門店「えほんやさん」代表も務める。