「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。劇中で流れるのは、映画「リリイ・シュシュのすべて」で使用された曲「グライド」。大好きな歌手Mitskiがカバーすると知った時、鳥肌が立つほど感動しました。
家族対抗のダンスバトルでは、ヤンたちもそうですが、人種や性別がさまざまな家族が参加していました。血縁関係に縛られない家族の様子に、多様性の進む未来を感じました。
ダンス中ヤンが故障し、やがて動かなくなります。印象的なのが、修復不可能になったヤンを博物館に展示するか否かを養父母で話し合うシーン。見せ物にしたくはないけれど、科学の発展のために必要なことなのではと悩む2人。まるで本当の家族を亡くしたような空気が流れるんです。刑事ドラマで、遺族が解剖に反対する描写に似ている気がして。壊れたロボットをただ手放すのではなく、温かみのある関わり方が素敵でした。
ヤンは中国の歴史や文化を継承する「文化テクノ」。養父母との人種の違いを同級生に指摘され悲しむミカに、「違う植物同士がつながって一つの新しい品種になる」と家族を接ぎ木に例えてなぐさめる。言葉選びのレベルが高く、ヤンの話をたくさん聞いてみたくなりました。
今回制作した爪は近未来すぎない配色で、植物などのモチーフを抽象的に描きました。爪を10枚ではなく7枚にすることで、10年という活動期間を経て培ってきた、型にはめない爪の在り方を表してみました。
(聞き手・片山知愛)
監督=コゴナダ
製作国=米 出演=コリン・ファレル、ジャスティン・H・ミンほか オリジナルテーマ=坂本龍一 爪作家 つけ爪を制作・販売。Webメディア「PINTSCOPE」で映画コラムを連載。著書に「爪を塗る―無敵になれる気がする時間―」(ナツメ社)。 |