|
この映画の舞台は、メキシコ五輪が開催された1968年から79年の北海道。地元ベッタベタなんだよね。北海道以外の人は、地名とか、春夏秋冬とかはわからないと思うんだ。だけど、ここで生まれ育った僕らにはうれしい。
タイトルが「駅」というだけあって場面の要所要所に線路や雪の原野を走る汽車が登場し、凶悪事件が起きて、男と女の恋物語につながっていく。舞台である上砂川(かみすながわ)町、増毛(ましけ)町、小樽市銭函(ぜにばこ)の三つのまちには共通点がある。かつて炭鉱やニシン漁で栄えていたが、下り坂になっている。高倉健が演じる主人公の三上は、北海道警察のベテラン刑事。五輪のフリーピストル選手だったことや、子を残して離婚し、寂しさをつのらせる人生とまちの風景が重なるんだ。
三上の故郷、増毛町の雄冬(おふゆ)までは日本海の荒波と吹雪で連絡船が欠航になることもしばしば。足止めをくらった三上が居酒屋を見つけ、店を一人で切り盛りする女将の桐子(倍賞千恵子)と大みそかを過ごす場面が好きだ。杯を合わす二人。紅白歌合戦のテレビから、八代亜紀の「舟唄」が流れる。ドンピシャリだよね。しばれる冬の夜なんて、居酒屋はまさに地獄に仏。二人の距離がぐっと縮まっていくんだなあ。だが彼女の昔の男は、三上の上司を射殺した犯人だった。
映画は演劇と違い、カメラのアングルやズームを変えることで観客と登場人物の距離が自由自在。絵本にもどこか通じるものがあるね。
聞き手・石井広子
監督=降旗康男
脚本=倉本聡
出演=高倉健、倍賞千恵子、いしだあゆみ、大滝秀治、 根津甚八、宇崎竜童ほか あべ・ひろし
1948年生まれ。旭川市旭山動物園の飼育係を経て、絵本作家に。「クロコダイルとイルカ」は2013年けんぶち絵本の里大賞を受賞。 |