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成山亜衣さん(画家)
「赤毛のアン」(完全版)

自然と戯れた記憶 想像しながら

 赤毛のアンの映画はいくつも公開されていますが、孤児院出身のアンが周囲に支えられて才能が開花していく過程に焦点を合わせた完全版が好きですね。
 
 風が目に見えるような演出もすごく美しくて、心を奪われたんです。登場人物の髪と風が戯れている様子とか、草花の上を駆け巡る様子とか。この点は、自分の制作活動と結びつくから気になっちゃうんかな。
 
 私の場合は可視化できない「記憶」をモチーフにして絵で表現しています。頭に浮かんだものを描くなんてよく言いますが、描いてしまえばやっぱり別物になってしまいます。頭の中にある像そのものをどう可視化したらいいのかなと、いつも考えながら作っていますね。
 
 アンの思考の構造はどんなんかなと考えていたら、彼女の手紙を養親のマシュウとマリラが読むシーンを思い出しました。手紙は何を思って書いたんかな。言葉を紡ぎ出して文字に書き起こしながら、養親が暮らすグリーンゲイブルズに帰ったときに目に映るであろう物や自然に思いをはせたのかな。たぶん、書いている文字と自宅で過ごした懐かしい日々を重なり合わせる心地よい時間だったと思います。そんな想像をイラストにしました。白い筆記体のような線は手紙の文字です。
 
 アン自身は決して外見の華やかさとか見栄えを優先する人ではなく、凜とした中身の美しい女性です。だから人は憧れ、魅了されるんじゃないかな、なんて。見返す度に新しい発見がある作品なので、年を重ねた大人にもう一度見てほしいなあ。
(聞き手・片野美羽)
 

  

 監督・脚本=ケビン・サリバン

 製作国=カナダ

 出演=ミーガン・フォローズ、コリーン・デューハーストほか

 

 なりやま・あい
 京都市立芸術大大学院修了。昨年、SICF25(スパイラル・インディペンデント・クリエイターズ・フェスティバル)の準グランプリを受賞。

 出展予定
 ○LURF GALLERY(東京・渋谷) 「WAVE 2025」後期(2月15日(土)~3月3日(月))
 ○SPIRAL(東京・青山) SICF25 EXHIBITON 部門 グランプリアーティスト展・受賞者展(5月10日(土)~25日(日))
 ○LURF GALLERY・1階 個展(5月14日(水)~6月9日(月))