子どもの頃からチャプリンの映画が好きで、この作品は20代で見ました。あまり大学へは行かず、「どうしたら面白い漫画が描けるか」ということばかり考えていたころです。
いま見ても笑えるギャグやユーモアをちりばめながら、ファシズムや人種差別の危険性、理不尽さが子どもにも分かる偉大な作品です。
チャプリンが演じたのはユダヤ人の床屋と独裁者ヒンケルの2役。印象に残っているのは、ヒンケルになりすました床屋が訴える最後の演説のシーンです。この演説を文章だけで見せられたらそこまで感動しないだろうし、説教くさく感じたかもしれない。でも、平和や民主主義、相互理解についての真っ当すぎるメッセージに、いつも胸を打たれます。これは映画の力、チャプリンという役者の力だと思います。
心の底から「世界中の戦争を止めてやる」という思いでつくったと思うんですよね。当時は作品に感動したものの、「戦争反対」の声は上げなかった。でもここ数年、ウクライナやパレスチナのニュースに接し、無関心であってはならないとSNSを中心に声を上げるようになりました。
ヒトラーのちょびひげの中に、イスラエルのネタニヤフ首相が見えるという絵を描きました。赤は、彼らが殺した人々の血の色です。チャプリンが生きていたら、パレスチナに連帯する映画をつくっていると思う。もちろん、「反ユダヤ」ではなく、「誰であれ虐殺されることがあってはならない」という、真っ当なメッセージを込めた作品に違いありません。
(聞き手・片山知愛)
監督・脚本・主演=チャールズ・チャプリン 製作国=米 出演=ポーレット・ゴダード、ジャック・オーキーほか ふじおか・たくたろう 1989年大阪府生まれ。2014年からSNSで1ページ漫画を発表。著書に「たぷの里」(ナナロク社)他多数。 |