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佐々木昂さん(イラストレーター)
「アリス」(1988年)

ダークでポップ ひと味違う不思議の国

 少女アリスがウサギをおいかけたどり着いたのは奇妙な生き物たちが住む不思議の国……。ディズニー版のイメージが強いですが、シュバンクマイエル版は一つ一つのモチーフがかなりダークです。大学図書館にあったDVDで初めてみた時、「こんな好き勝手していいんや」と衝撃を受けました。

 頭蓋骨(ず・がい・こつ)だけの動物が出てきたり、頭の上で火をつけて煮炊きしたり。導き手の白ウサギは剝製(はく・せい)で、手にはハサミを持ってるし。しかもおなかに穴が開いていて、そこからおがくずがぽろぽろ落ちていくんです。それだけ聞くと怖いと思いますが、こぼれたおがくずをスプーンですくってまた食べる様子が、可愛かったりします。

 コマ撮りアニメであることも相まって、怖い、気持ち悪い見た目とのギャップがより可愛さを引き立てているのかな。グロテスクなシュバンクマイエル作品の中では一番ポップやと思います。

 アリスは自身の活動の中でも何度も描いているモチーフの一つです。大学生のとき仲良くしていた先輩の手伝いで行ったイベントのテーマがアリスだったことをきっかけに、自分でも題材にするようになったので、縁を感じています。

 イラストには映画に登場する中で、特にシュバンクマイエルらしいと思ったキャラクターを描きました。他のアリスをモチーフにした作品とは異なり、白うさぎを追いかけるアリスはその後逆に白うさぎに追いかけられてしまいます。みんなが知ってる可愛い「不思議の国のアリス」ではないことを表現するために逃げるアリスの足をちらりとのぞかせました。

(聞き手・中山幸穂)

 

  
   監督ヤン・シュバンクマイエル   

 制作国=スイス、独、英

 出演クリスティーナ・コホウトバー

 

 ささき・あきら 1989年生まれ、兵庫県出身。ステッカーブランド「B-SIDE LABEL」でもデザイン。自作は英国の「アリス・ショップ」でも扱われている。

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(2025年5月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)