自然や身の回りの色を、絵の具を使いその場で紙に写しとる「カラーハンティング」を考案し、デザインに生かしています。昨年から大学の研究で、人口14億人超のインドで色をハントしています。
「インド独立の父」マハトマ・ガンジーがしたように列車に乗り、半年かけてほぼ一周して、中学生の時に映画で見た彼の偉業を実感しています。国土は広く、熱帯魚のように色にあふれた街もあればモノトーンの街もある。文化風土が異なる人々がひしめき、街中のもめ事はしょっちゅう。彼一人の行動で、非暴力・不服従という困難な思想にみんなが共感し、まとまって英国からの独立へと進んだなんて、規模を知るとちょっと信じられない。
映画前半でガンジーは英国紳士と同じシャツやスーツ姿でしたが、ある時から手紡ぎ手織りした白い布「カディ」をまといます。何かを覆い隠す黒と違い、白は一見裏表なく清廉です。しかし、白布の輝きが国内の宗教対立を覆い隠していたんですね。対立が元で彼は同じヒンドゥー教徒に暗殺された。白布が隠していた現実の雰囲気を現地で体感し、白の持つ別の側面に気付かされました。
葬送シーンで、ガンジーを「富も地位もない一個の人間」と評したニュース実況から発想して、水彩でトランプを描きました。独立年を表すカードと、K(王)でもQ(女王)でもない「G」のカード。帯は白布の白、服はインド国旗の色や、現地でよく見るマリーゴールドとジャスミンの柄に。糸車は英国旗の色で塗り、手には刀ではなく糸巻きを持っています。
(聞き手・帯金真弓)
監督=リチャード・アッテンボロー 製作国=英、印 出演=ベン・キングズレー、キャンディス・バーゲン、ジョン・ミルズほか ふじわら・だい 1967年生まれ。テキスタイルデザイナーを経て、資生堂や日立などのオープンイノベーションで協業。多摩美術大教授。カラーハンティングは中学美術の教科書で紹介。インドでのカラーハンティングはインスタグラムで公開。 Instagram:https://www.instagram.com/fujiwara_dai/ |