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上野の小さな映画館で見た日から、人生が変わったといっても過言ではない。それほど影響を受けた作品です。
ギャングのフランキーが、ベルギーの宝石商から86カラットのダイヤモンドを奪う。これをニューヨークのマフィア、ロシアの武器商人、ロンドンのノミ屋が奪い合います。登場人物ごとにエピソードがキレよく展開し、オチへと収束する様は圧巻です。僕が漫画を描くときに大切にしているのは、幼いころに聞いた「ドンドンパンパン」という盆踊りのリズム。「スナッチ」のテンポのよさも、それに通じるものを感じました。
豪華な役者陣の中でもやっぱり、放浪人ミッキーを演じるブラッド・ピットは魅力的です。鍛え上げられた肉体に、自然体の演技。フランキーが賭けようとした非合法ボクシングの試合では、帽子をかぶり、たばこをふかすという信じられないスタイルで登場します。これがたまらなく、かっこいい。
ダイヤモンドを横取りしようとレプリカの銃を向けてくる3人組と、すご腕の殺し屋トニーがにらみ合うところも秀逸。「お前が親玉だな。小玉を二つぶらさげて」とからかいながら、デザートイーグルという本物の銃を見せてすごむ。笑いとかっこよさが共存しています。真剣な場面なのに笑えるって、すごいことなんです。
恋愛要素や涙を誘うシーンはないのに、男たちの言動一つ一つにしびれる。僕もそんな心動かす仕事をしていきたいんです。
聞き手・中村和歌菜
監督・脚本=ガイ・リッチー
製作=英
出演=ジェイソン・ステイサム、ブラッド・ピット、ベネチオ・デル・トロほか しばた・よくさる
1972年生まれ。将棋漫画「ハチワンダイバー」が、17日発売の「週刊ヤングジャンプ」33号で最終回を迎えた。 |