漫画家になりたての23、24歳の頃、デビッド・ボウイと坂本龍一が共演すると知って映画館に3回も見に行きました。
第2次世界大戦中、ジャワにある日本軍捕虜収容所を舞台に、男たちの交流を描いた物語です。簡単な内容ではなかったので、原作本も読みました。映画では日本軍のヨノイ大尉と英国陸軍少佐ジャック・セリアズの立場を越えて引かれ合うような関係が描かれていたのに、原作ではそうでもなかった。そこがまた面白かったですね。
日本の軍人と捕虜の関係性でありながら、異文化との関わり方を見せてくれるのが印象的でした。私自身、子どもの頃からずっとアウトサイダー的な感覚があって。でも、イギリスに来た時、「私は日本人で、ここは外国。違って当たり前」と思えて、かなり楽になりました。
「クリスマス」と言いながら、クリスマス感を描きすぎないところも粋ですね。イラストに描いたのは、冒頭に現れるトカゲ。その後北野武が演じたハラ軍曹がドアップで登場し、あの音楽が流れる。坂本さんの映画音楽の中でも「戦メリ」が一番好きです。物語が始まっていくワクワク感、切なさ、空気感。全てが込められているのがすごい。
映画館で見て以来、実は一度も見返したことがないのに、なんでこんなに覚えているんだろう。仕事が忙しくなる前に時間をかけてのめり込んだ貴重な映画だったことと、一緒に見に行った友達との思い出が詰まっているからだと思う。私にとって世界を広げようとしていたあの頃を思い出す、タイムカプセル的な作品です。
(聞き手・片山知愛)
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原作=ローレンス・バン・デル・ポスト
監督・脚本=大島渚 製作国=日・英・ニュージーランド 出演=デビッド・ボウイ、坂本龍一、北野武、トム・コンティほか
くぼ・きりこ 1959年生まれ。ロンドン在住。著書に「いまどきのこども」など。「祖母姫、ロンドンへ行く!」(椹野道流著)の漫画連載を準備中。
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