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イラストレーターとして独立したものの、仕事もなく、どういう方向性で活動していこうかと悩んでいたさなかに見ました。37年前のことです。
父親の再婚にさみしさを覚えた少女が友人と7人で、幼い頃に会った伯母の家を訪ねる。そこで次々と屋敷の「餌食」にされていくという話です。アイドル映画や米国の家モノのホラーブームに乗ったふりをしていますが、ふたを開けると大林監督の個人的趣味をふんだんにつめこんで展開していきます。劇場長編デビュー作とは思えない大胆さです。
序盤7人が集合する東京駅は、実際とは全く別のデザインの作り物です。そこにゴダイゴの歌が流れ、まるでミュージックビデオのよう。CM制作出身の監督ならではの演出に引き込まれました。
ところが山頂の屋敷に着いてからは、骸骨が踊り、井戸から生首が飛び出し、布団が襲ってくるなど、アバンギャルドなシーンの連続。特に、少女がピアノに食べられていくのを金魚鉢ごしに映したカットは理解を超えて衝撃的でした。
特殊効果はお世辞にも立派とは言えません。確信犯的に、おもちゃ箱をひっくり返し、さらにかき混ぜたような混沌(こんとん)の世界を表現したのでしょう。リアルに作ると本当のホラーになってしまうので。
作品は自分自身が楽しんで作らないと他人にもアピールできない。映画からあふれる監督の幸福感に学びました。それからは仕事も趣味だと思って取り組んでいます。
聞き手・中村和歌菜
監督=大林宣彦
出演=池上季実子、大場久美子、松原愛、神保美喜、佐藤美恵子、宮子昌代、田中エリ子、南田洋子ほか
きたみ・たかし
1952年生まれ。赤川次郎や恩田陸らの小説の装画を手がける。10月16日(木)~22日(水)、東武百貨店池袋店で作品展を開催。 |