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某国の王女が、ローマでの一日の恋を通じて成長する物語です。相手はイタリア人ではなく、ローマ駐在の米国人新聞記者という設定で、オードリー・ヘプバーン、グレゴリー・ペック以外のキャスティングは考えられません。ストーリー設定、配役。いい映画とは、なにもかもがうまく合致しているものですね。
男っぽい活劇などではなく、好きな映画にこのラブコメディーを挙げたのは、記者役のグレゴリー・ペックの視点でこの映画を見ていたから。男には「美しい女の人への永遠の憧れ」があるんです。王女役のヘプバーンは、途中で長髪を切ってショートヘアに変身する。当時はみんなあの「ヘプバーンカット」になっていましたよ。うちのおふくろさえもね。
印象的なのは石の彫刻「真実の口」に手を入れる有名なシーンです。ヘプバーンを驚かすために手をかまれるフリをしたのは、グレゴリー・ペックのアドリブらしいですね。素性を隠して特ダネを狙う記者とカメラマンが、王女の前で会話するカフェの場面もいい。記者が、英語でspillという「秘密をもらす」と「飲み物をこぼす」の二つの意味をかけたおしゃれな言い回しをするんですよ。
僕は30年以上、月90本の4コマ漫画を描く生活です。ストレスで公務から逃げ出した王女のように、息抜きに家族で草津温泉に行ったら、編集者に宿を探し当てられて描き直しを頼まれたことも。忙しくて海外旅行は無理でも、ローマにはいつか行きたいな。
聞き手・曽根牧子
監督=ウィリアム・ワイラー
出演=グレゴリー・ペック、オードリー・ヘプバーン、エディ・アルバートほか
うえだ・まさし
1947年生まれ。82年から読売新聞で4コマ漫画「コボちゃん」を連載。代表作に「かりあげクン」「おとぼけ課長」など。 |