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植田まさしさん(漫画家)
「ローマの休日」(1953年)

美しい女性への永遠の憧れ

 植田まさしさん(漫画家)「ローマの休日」(1953年)

 

 某国の王女が、ローマでの一日の恋を通じて成長する物語です。相手はイタリア人ではなく、ローマ駐在の米国人新聞記者という設定で、オードリー・ヘプバーン、グレゴリー・ペック以外のキャスティングは考えられません。ストーリー設定、配役。いい映画とは、なにもかもがうまく合致しているものですね。

 男っぽい活劇などではなく、好きな映画にこのラブコメディーを挙げたのは、記者役のグレゴリー・ペックの視点でこの映画を見ていたから。男には「美しい女の人への永遠の憧れ」があるんです。王女役のヘプバーンは、途中で長髪を切ってショートヘアに変身する。当時はみんなあの「ヘプバーンカット」になっていましたよ。うちのおふくろさえもね。

 印象的なのは石の彫刻「真実の口」に手を入れる有名なシーンです。ヘプバーンを驚かすために手をかまれるフリをしたのは、グレゴリー・ペックのアドリブらしいですね。素性を隠して特ダネを狙う記者とカメラマンが、王女の前で会話するカフェの場面もいい。記者が、英語でspillという「秘密をもらす」と「飲み物をこぼす」の二つの意味をかけたおしゃれな言い回しをするんですよ。

 僕は30年以上、月90本の4コマ漫画を描く生活です。ストレスで公務から逃げ出した王女のように、息抜きに家族で草津温泉に行ったら、編集者に宿を探し当てられて描き直しを頼まれたことも。忙しくて海外旅行は無理でも、ローマにはいつか行きたいな。

聞き手・曽根牧子

 

  監督=ウィリアム・ワイラー
   出演=グレゴリー・ペック、オードリー・ヘプバーン、エディ・アルバートほか
うえだ・まさし
 1947年生まれ。82年から読売新聞で4コマ漫画「コボちゃん」を連載。代表作に「かりあげクン」「おとぼけ課長」など。
(2014年9月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)