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林家木久扇さん(落語家)
「鞍馬天狗 角兵衛獅子」(1951年)

アラカンまねた新作落語もヒット

 林家木久扇さん(落語家)「鞍馬天狗 角兵衛獅子」(1951年)

 

 鞍馬天狗(てんぐ)は少年時代に夢中になったチャンバラヒーロー。アラカンこと嵐寛寿郎主演のシリーズは全て見ています。

 公開当時、私は中学2年生。夏休みに映画館でアイスキャンディー売りをやっていたため、「顔パス」で、入場料はタダでした。何度も映画を見ることができたので、鞍馬天狗の動き、セリフをすっかり覚えてしまい、学校で物まねをやったらウケて、クラスの人気者でした。

 角兵衛獅子(かくべえじし)という大道芸の杉作少年を演じた美空ひばりは私と同世代。メキメキ売り出していたひばりは、我らの星として大きな希望と憧れでした。その彼女が大好きな鞍馬天狗シリーズに初出演したのですから、夢中になるわけです。

 杉作がお金を落として泣いているところへ、鞍馬天狗が現れてお金を恵む場面は忘れられない。天狗の情と杉作の孤独が1カットで描かれている。天狗と杉作、お喜代、吉兵衛のピクニックシーンも時代劇には新鮮だった。そしてなんといってもラストの京都・東寺(とうじ)の一騎打ち。勤皇の志士である天狗と、新選組・近藤勇役の月形龍之介との立ち回りは、リアルで重厚、大迫力です。

 「少年倶楽部」に連載されていた大佛次郎先生の原作もよく読みました。後年、漫画家を志して鎌倉の清水崑(こん)先生のもとで修業中、大佛先生にお会いしたことも。落語家になってからは、得意のアラカンの物まねを盛り込んだ新作落語「昭和芸能史」がヒットし、大いに稼がせていただきました。

構成・曽根牧子

 

  監督=大曽根辰夫
   原作=大佛次郎
   出演=嵐寛寿郎、美空ひばり、山田五十鈴、月形龍之介ほか
はやしや・きくおう
 1937年生まれ。漫画家、絵本作家としても活躍。現在休養中で、レギュラー番組「笑点」(日本テレビ系)に10月復帰予定。
(2014年9月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)