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黒人音楽が好きで、この作品は音楽を聴くために何度も見ています。初めて見たのは20代前半だったかな。徳島から上京して、叔父のデザイン事務所で働いていた頃です。主題歌のレコードも持っていて、今でも仕事をしながらよく聴いていますよ。
主人公のシャフトは腕利きの黒人私立探偵。犯罪の温床となっているニューヨークのハーレムで、次々と事件を解決していきます。そんなシャフトのもとに、ハーレムを牛耳るバンピーが依頼にやって来ます。過激派グループに娘が誘拐され、取り戻して欲しいと言うのです。
「シャフト!」と繰り返す主題歌をバックに、シャフトが街中をさっそうと歩くオープニングは、何度見てもわくわくします。人種差別が残り、危険な空気が漂う街並みに、外国のにおいを感じて興奮したのを覚えています。
この作品を見た後、1973年に初めてアメリカを旅しました。仲間と40日くらいかけて色々な都市を巡り、ハーレムにも行きました。アポロシアターでライブを見たり、画材屋に行ったり。とにかくスケールの大きさに衝撃を受けて帰ってきました。
僕を含め70年代の若者の多くが黒人映画を見て、ソウルミュージックを聴き、アメリカ文化に憧れながら育ってきました。そうした経験の数々から、僕の西海岸をモチーフにしたイラストが出来上がっていったんだと思います。
聞き手・永井美帆
監督=ゴードン・パークス
音楽=アイザック・ヘイズ
製作=米 出演=リチャード・ラウンドトリー、モーゼス・ガンほか ながい・ひろし
1947年生まれ。大滝詠一らのレコードジャケットを数多く手がける。10月23日~28日、東京・渋谷の東急百貨店本店で個展を開催。 |