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小さい頃、大人になったら映画のマリア先生のようになりたかったんです。ジュリー・アンドリュースの演技に魅せられて、本当にこういう人がいると思ったから。舞台となったオーストリアにわざわざ訪れたほどです。
ナチスの台頭で戦争に向かっていたザルツブルク。妻を亡くした退役軍人トラップ大佐と7人の子供たちの一家に、修道院から家庭教師としてマリアがやってきます。つらいことや苦手なこと全てを、マリアは歌に変えてメッセージを送り、家族の心を動かしていきます。
たとえば、雷の音におびえて部屋に集まってきた子どもたちに「マイ・フェイバリット・シングス」を歌い、初めて子どもたちと心が通じ合う場面。「泣きたい時は楽しいことを考えるのよ」と、こうしたいと願う心の声を一つひとつメロディーにのせます。感情を音楽に変えていく過程が丁寧に描かれています。
亡命の途中、一家はナチスの武装組織に追われます。銃を向ける隊員に大佐は「君はまだ若い」「彼らに加わってはいけない」と、一歩踏み込んで言います。歌と笑顔と、色と楽しさでさらっと見せているけれど、結構深いんですよね。
マリアは歌で家族に伝えていることだけど、私は絵を描くことや企画することで、七色が広がるみたいに、誰かの光のような存在になりたい。いつかは、映画を作りたいと思います。音と景色と時間、時空……。まるで神様みたいなことじゃないですか!
聞き手・石井広子
監督=ロバート・ワイズ
脚本=アーネスト・リーマン
製作=米 出演=クリストファー・プラマーほか もりもと・ちえ
1976年青森県生まれ。企業広告のほか、保育園、動物園の空間デザイン、ミュージシャンのアートワークも手がける。 |