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中野シロウさん(グラフィックデザイナー)
「オズの魔法使」(1939年)

おもちゃのような世界観

 中野シロウさん(グラフィックデザイナー)「オズの魔法使」(1939年)

 

 子どものころ、字幕の意味は完全には分からなかったけれど引き込まれて、「オズの国」はあるんだと思ってた。以来、原作や関連作をチェックして、グッズも集めています。「オズ」とつくものにはとにかく反応してしまうんです。

 竜巻に飛ばされた少女ドロシーが飼い犬トトと異世界に迷い込み、故郷カンザスに帰るためにオズの魔法使いに会いに行きます。旅のお供は、脳みそがからっぽなかかし、心がないブリキ男、臆病なライオン。ドロシーの家の使用人たちをキャラクターに見立てているのですが、それぞれの性格づけや造形がとてもうまい。特にかかしは動きが面白くて、哀愁あるたたずまいも気に入りました。

 一番の魅力はおもちゃ的な世界観。マンチキンという小人が住む町や、黄色いれんがの道など、にぎやかにセットが作り込まれています。その上、マンチキンのパレードや、猿が空を飛ぶ特撮は今見ても迫力満点。ただ、小さい頃は緑色の顔をした悪い魔女が怖くって。だから僕の作品には悪者を登場させないんです。

 名曲ぞろいの音楽の中でもやっぱり、ドロシー役のジュディ・ガーランドが歌う「オーバー・ザ・レインボー(虹の彼方〈かなた〉に)」がお気に入り。何度聴いても飽きない素晴らしい曲です。

映画化されているのは原作シリーズのほんの一部で、他にも様々なキャラクターが登場し、話も奥深いんですよ。もっと多くの人に「オズ」の世界に触れてほしいですね。

聞き手・中村和歌菜

 

  監督=ビクター・フレミング
   製作=米
   出演=ジュディ・ガーランド、フランク・モーガンほか
なかの・しろう
 デザインチーム「play set products」の代表として、ぬいぐるみ「モダンペット」やキャラクターデザインなどを手がける。
(2014年11月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)