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性別を超越した恋人同士の10年にわたる愛の物語。2人が自分たちを見つめ、探し続ける旅の物語でもある。
カナダのモントリオールで国語教師をしているロランスは、自分の小説が受賞し、同居している彼女フレッドとも順調だった。でも35歳の誕生日を機に「女になりたい。これまでの自分は偽りだった」と打ち明け、女装して出勤するようになる。フレッドはロランスの最大の理解者であろうと決意するけれど……。
再会した2人が旅に出るシーンが興味深い。カラフルな衣装が空から降ってくる。心が解放された2人のサングラスの下の表情が眩(まぶ)しい。これまでの服を捨て、脱皮する意味が込められていると思う。衣装が降ってくるのは、見方を変えると、2人が地上から別世界へ上昇しているように見える。
作品には古典から80年代ポップカルチャーまで幅広く引用されている。映画が絵画や音楽、文学などを総合した「第七芸術」であることを見せている。
原題は「とにかくロランス」。男性とか女性ではなく、自分は自分と宣言し、それを貫く内容だと表す。LGBTといわれる性的少数者はじめ、多様な性が知られるようになったけれど、一人ひとりが、尊厳ある唯一無二の存在ということでは、みんなマイノリティーだと思う。
イラストは、一人の人間がジェンダーを横断し、様々に分裂し、最終的には時間や記憶を巻き込んで、統合していくイメージで描きました。
聞き手・由衛辰寿
監督・脚本=グザビエ・ドラン
製作=カナダ・仏
出演=メルビル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイほか う゛ぃう゛ぃあん・さとう
性を超えた独自の感性で作品制作や芸術評論、ライブのプロモートも。「フィガロジャポン」のウェブサイトなどでブログ連載。 |