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最近、昔見た映画をいくつか見返していて、一番心に残ったのが高校生の頃にテレビの深夜放送で見たこの作品です。主演のブルック・シールズの美しさと自然で無邪気な演技に圧倒されました。公開当時13歳だった少女がこんな風に演じられたのは、きっと監督さんの力も大きいのではと感じます。
ブルック・シールズが演じるのは、ニューオーリンズにある高級娼館(しょうかん)で生まれ育ったバイオレット。外の世界を知らない少女は、自然と娼婦(しょうふ)として働くようになります。そんなある日、彼女たちの写真を撮りに来た若い写真家ベロックと恋に落ち、やがて館を抜け出し、一緒に暮らしはじめます。
初めてお客さんをとる時を迎えたバイオレットが着飾って、オークションにかけられる場面は衝撃的でした。残酷な話のようだけど、娼婦たちがたおやかで強くて、悲壮感はありません。衣装はもちろん、絨毯(じゅうたん)、カーテン、シャンデリア、ソファ……。画面に映し出されるものの全てが調和していて、印象派の絵画を見ているかのようにうっとりする場面の連続です。
隅々まで徹底的にこだわって作られた世界だからこそ、登場人物たちが生き生きと動き回れるのだと感じました。私も漫画を描く時、「生きている人」を描くように努めています。だから、こうした世界観づくりが大切なんだと改めて気付かせてもらった作品です。
聞き手・永井美帆
監督・脚本=ルイ・マル
製作=米
出演=ブルック・シールズ、キース・キャラダイン、スーザン・サランドンほか いけべ・あおい
洋裁店の2代目店主を主人公にした「繕い裁つ人」の6巻(最終巻)が発売中。1月31日(土)、同作の実写映画が全国公開。 |