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小住匡彦さん
ケントハウス 苺のショートケーキ

ケントハウス 苺のショートケーキ

 実家がケーキ屋で、パティシエの父がつくった、僕の中で基本となっているケーキです。幼い頃からよく食べていました。砂糖のパーセンテージをめちゃくちゃ減らしているので、甘さが控えめで食べやすいんですよ。実は今は、幼い頃の反動なのか甘いものは、ケーキの試作では食べますが、普段はそんなに好んで食べたりはしないんです。そんな自分にとって、父のケーキは「味」のベースなんです。
 大学卒業後、サッカーの仕事を夢見てパリに渡航しました。しかし挫折を経験しパティシエの道に進むことに決めました。修業中、フランスの「おいしい」「おいしくない」が分かるようになったら面白いんじゃないかと、フランス人の舌になるために奮闘しました。日本ではもっちりと軟らかめの食感が多いですが、フランスではどちらかというと固めを好むという舌の違いがあるんです。
 そうして舌をフランスにして帰国し、自分の店を立ち上げました。フランスの味も素晴らしいのですが、やっぱり日本人の舌に合ったスイーツの良さも味わってもらいたい。フランスで僕が作ったレシピを、日本風にアレンジしたケーキを作り、好評です。「日本の味ってこうだったな」と思い出すために、父のケーキを食べることが今でもあります。

(聞き手・中山幸穂)

◆本店 大阪市東成区大今里南1の21の19(問い合わせは06・6974・4109)。
 680円。
 午前10時~午後9時(現在は午後8時までの営業)。
 年末年始以外無休。


 おずみ・まさひこ パティシエ。1991年、大阪市生まれ。
 パリの洋菓子専門学校で勉強し、市内有名店での修業を経て、28歳でパリの5つ星より格上の「palace」ホテルのスーシェフ(副料理長)に就任。帰国後、「Masahiko Ozumi Paris」を立ち上げる。

(2023年6月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)