平安装束をまとい、雅楽ネタを披露する芸人・カニササレアヤコさん。経済誌フォーブスジャパンの「世界を変える30歳未満(30 UNDER30JAPAN)2022」のエンターテイメント部門を受賞したということで存在を知り、雅楽ネタって何だろうと軽い気持ちで再生した「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」で爆笑しました。こちらも必見です。R-1グランプリ2018ファイナリスト。「激レアさんを連れてきた。」などのテレビ番組にもゲスト出演。2022年4月、東京芸術大学に合格。かなり遠い存在だと思っていたら、記者の友人の高校時代のクラスメイトだと発覚しました。芸人、ロボットエンジニア、音楽家としてマルチに活躍するカニササレアヤコさん。その頭の中を探ってみました。(聞き手・島貫柚子)
※カニササレアヤコさんは11月30日(木)朝日新聞夕刊「グッとグルメ」に登場しました。
――肩書を教えてください。
お笑い芸人で、ロボットエンジニアで、雅楽演奏家です。
――フォーブス誌、日本発「世界を変える30歳未満(30 UNDER30JAPAN)2022」、エンターテイメント部門の受賞を知った時はどう感じましたか。
びっくりしましたね。マネージャーさんから、「なんか受賞したらしいんですけど。どうしますか」って。誰も自分のYouTubeとか見てないだろうと思っていたので、まさかフォーブスの方が見ていたとは。
――芸名「カニササレアヤコ」の由来は。
よく蚊に刺されるからですね。
――サインを書く場合は、「蚊」じゃなくて「カニ」を書くんだとか。
そうですね。色紙に蚊を書くのもあれかなと思って。(笑)
――「なまちゃん」から、「カニササレアヤコ」に芸名を変えた理由はなんでしょうか。
うーん……。なんか雅楽っぽくないので、もうちょっとカッチリした方がいいかなって。それで肌感覚に訴えるような芸名に変えました。
――笙はいつから始めたんでしょうか。
18歳からです。
――きっかけは何でしたか。
母が篳篥(ひちりき)っていう雅楽の楽器を趣味でやっていたので、その影響ですね。
――笙とお笑いを掛け合わせた「雅楽ネタ」を始めた経緯を教えてください。
もともと「細かすぎて伝わらないモノマネ」のオーディションに持っていこうと思って始めた気がしますね。ライブでやったら結構ウケて、そこから始まりました。
――でも、かなり斬新な発想ですよね。笙×お笑い。カニササレさんとしてはごく自然な掛け合わせでしたか。
雅楽ってやっぱ日本人にとってすごく神聖なイメージというか、荘厳な固定概念があると思うので、それをうまく使って笑いに変えられないかなと考えました。
――当時から衣装は平安装束でしたか。
そうですね。当時の衣装は自分で作っていました。宣材写真の衣装は、自分で作ったやつだと思いますね。
――ご自身のネタでお気に入りのネタはありますか。
うーん。ファミマの入店音ですかね。あれは結構誰でもわかるし、雅楽のハードルをちょっと下げられるような感じがしています。ああいうので雅楽を知ってもらえたらいいなって思っています。
――絶対音感があるとも聞きました。笙以外に演奏できる楽器は。
ピアノ。ドラムも少し習っていました。あと吹奏楽部だったのでアルトサックス、高校は弦楽部だったのでバイオリン。バンドネオン、ラブドラムも演奏できます。
――なかでも一番好きな楽器はなんでしょうか。
やっぱ笙ですね。繊細ですごく綺麗な音がしますし、吹奏楽器なのにいろんな音の重なりが作れるのが面白いです。
――最近は、笙の演奏のお仕事も増えてきてるとか。現状をどう捉えていますか。
2022年に東京芸大の雅楽専攻に入って、そこから結構演奏家として見てもらえることも増えてきたのかなと思います。雅楽の演奏の方もちゃんとやりたいですし、すごく嬉しいですね。
――現在は週に何日芸大に通っているんでしょうか。
週4で行っています。
――エンジニアのお仕事は。
一応週2です。
――エンジニアのお仕事が雅楽に生きてきていると思うことは、何かありますか。
西洋の五線譜の楽譜を雅楽の楽譜に自動変換するアプリみたいなものを作っています。雅楽の譜面って漢字とかカタカナで書かれているんですよね。
――すごいですね。週間のうち、残りの1日はお休みでしょうか。
お笑いとか、演奏の仕事をしています。
――幅広く活動なさっているんですね。カニササレさんの今後の目標は。
世界に雅楽を広めたい。本当にいい音楽だと思うんですけど、知られてない部分がすごく多いので。国内も、世界的にも雅楽に興味を持ってくれる人が増えたらいいなと思います。その一助としてお笑いが使えたらいいですね。
――具体的にこんなことしてみたい!というのは。
タモリ倶楽部に出たかったんですけど、終わってしまったんですよね……。ほんとに残念。 それがなくなって、もう目標がなくなっちゃった。
マネージャーさん
ちょっと、なんかないですか?(笑)
――お話を脱線させてしまいますが、私、湘南高校の友人がいまして。
はい。
――上條さんです。
え?ええええええ!じゃふ!
――はい。大学の親友なので、ラインで「カニササレアヤコさんって知ってる?」と送ってみたら、「クラスメイトだし、名前順前後だし、この前同窓会でも会ったよ~!」
うん。同じクラスでした。そうだ、名前の順も前後だ。
――ということは、カニササレさんは名字も「か」?
そうですね。
――その「か」と、カニササレの「カ」はとくに関係なく?
関係ないです。(笑)
――カニササレさんにとって、お笑いとはなんでしょうか。
自分の弱みが生きる場所。なんていうか、「これができない」っていうのが、結構人から見たら面白かったりする。
――カニササレさんの場合は、なにが出来なくて?
明るいお笑いが出来なくて。あんまり大きい声が出せないから、ちょっと静かめにやろうかなって雅楽を取り入れたのが逆に良かったですね。中学時代からほんとに芸人になりたかった。本当に夢でした。それを今やれていてすごく嬉しいです。思い描いてた形とは違いますけど、結局は嘘をつけないんだと思います。自分に合ったことができるのが、お笑いのいいところだと思います。
カニササレアヤコ
お笑い芸人。雅楽演奏家。ロボットエンジニア。1994年生まれ。芸名の由来は、蚊に刺されやすいから。絶対音感を持ち、バイオリンなども演奏する。宣材写真の平安装束は手作り。フォーブスジャパンが選んだ、昨年の「世界を変える30歳未満の30人」。