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【SP】演歌は第7世代へ
歌手二見颯一さん インタビュー

 10代、20代の若手が続々と誕生している演歌界。「第7世代」という言葉も誕生するほど盛り上がりを見せています。きらびやかな衣装を身につけ、時には軽やかにダンスもこなす若手演歌歌手たち。朝日新聞夕刊コラム、「グッとグルメ」等の取材を通して様々な歌手に話を伺うなかで、私と同じ20代の彼らがなぜ演歌に行き着いたのか、知りたいと思いました。今回は、二見颯一さんに話を聞きました。普通の学生生活を送っていたという二見さんが、なぜ演歌歌手としてデビューしたのか? 演歌界を担う25歳としての思いは? たっぷりと語っていただきました。(聞き手・田中沙織)

※二見颯一さんは1月11日(木)朝日新聞夕刊「グッとグルメ」に登場しました。

 

――もともと歌手になるために、地元・宮崎から上京されたんですか?

 

 実は、大学進学のために上京したんです。ごく普通の学生生活を送っていました。「将来は地元に帰って就職して、民謡を教える免許をいかして指導者になりたいな……」と思っていたんです。

 大学一年生の夏に、レコード会社の演歌・歌謡曲のオーディションのはなしをいただくまでは、自分が歌手になるなんて考えもしなかった。グランプリをいただいたとき初めて、「自分が表舞台に立ったらどうなるかわからないな」と思いました。

 

――今となってはどう思いますか?

 

 歌手は、1番自分に合っている職業だなと思います。1秒たりとも苦じゃないんです。独学で学んだ絵の趣味をいかしてテレビ番組に出演することもあるのですが、表現するのが好きなタイプなのかもしれません。

 

――テレビで活躍したり、SNSでは“今どき”の等身大の姿を発信されたり、はたまたステージでは流暢なトークで盛り上げたり、いろんな一面があるなと思いました。デビューする際、自身の特徴の打ち出し方は、かなり考えられたんですか?

 

 考えていましたね。

 でも、無理をせずに自分の好きなことをアピールする方が良いと思っています。絵やファッションもそうですけど、自分が好きなことだからこそ“見せ方”も幅広くわかる気がします。

 SNSを自分たちで発信しやすいというのも強みだと思います。SNSを使うのも慣れているので、ステージとは違ったプライベートを見ていただけるのもいいところかなと思います。他にもブログ、ラジオ、テレビなど、それぞれで僕の新しい一面をお届けできるように、いつも話題探しを頑張っています。

 でも、ステージでお客さんの表情をよく観察してパフォーマンスをするのは、民謡を習っていた時からの癖だと思います。民謡を習い始めたきっかけは、2歳の時です。近所のお祭りでなぜか突然ステージに上がって、当時流行った演歌を歌い出したらしく……。それを聞いた近所の人が両親に、「民謡を習わせなさい」と言ったそうです。あれよあれよと、5歳の頃から教室に通いはじめ、気づけば大会に出るようになりました。

 民謡には大会があって、客席に座った審査員の先生の前で歌を披露するんです。僕はずっと、審査員の手元を見て歌っていました。審査方法は減点式なので、審査員のペンが動いたら点が引かれたってことなんです。逆をいうと、ペンを置いたら100点満点ってこと。小さい頃から審査員の手元を見ながら歌い、結果を予想していました。面白みのない子だったんです(笑)

 少し話は違うかもしれませんが、ファンの皆さんの前で歌を披露するのも、似たところがあると感じています。ステージに立たせていただくとき、「ファンの皆さんの様子はどうかな?」というのを常に気にかけながら歌っています。

 

――どのような方が聞きに来てくださるんですか?

 

 以前は、60代後半~80代以上が多かったんですが、若手の男性歌手4人(辰巳ゆうとさん、新浜レオンさん、彩青さん、青山新さん)とともに作った『演歌第7世代』の活動が始まってから、10代~20代のファンも増えました。客席の様子だけ見たら何のコンサートかわからないぐらい混沌としています。

 男性の方も来てくださります。もちろん女性のお客様の中にも歌をきっかけに聞きに来てくださる方もたくさんいらっしゃるのですが、女性は特に幅広い視点で見てくださる気がします。衣装や髪型、メイクだったりする。ステージでも目が合うのは女性が多いんです。しかし男性の中には、目をつぶって聞かれる方がいらっしゃるんです。歌を聞かれた後は、最後の握手会や撮影会には並ばれずにすぐにお帰りになります。応援いただくかたちはファンの皆様それぞれ違うんです。

 

――『演歌第7世代』が立ち上がったきっかけは何ですか? みなさん事務所もレコード会社もバラバラですよね。

 

 「若い世代が大先輩たちの中に埋もれないよう打ち出していきたい」ということで、僕が所属するビッグワールドの社長が立ち上げました。そして、デビュー2、3年目の僕たちが集まってやってみたらここまで来た、という感じです。それまでは、若い歌手だけでステージをやるという発想が演歌界にはなかったようです。今の時代に合ったアピールを始めました。

 

※演歌の第7世代とは?

 ビッグワールド関係者によると、演歌界での「第7世代」という言葉は、2010年代後半に誕生したといわれる「お笑い第7世代」から取ったとされます。演歌業界の中で正式に使用されている言葉ではありません。第1~6世代に当てはまる歌手も、明確には決まっていません。週刊朝日の記事(2022年5月20日発行)は、各世代の例として下記のように記しています。

 第6世代:山内惠介、三山ひろし、純烈、丘みどり
 第5世代:氷川きよし、水森かおり
 第4世代:八代亜紀、吉幾三、石川さゆり、細川たかし
 第3世代:北島三郎、五木ひろし
 第2世代:美空ひばり、島倉千代子
 第1世代:春日八郎、三橋美智也

 

――『演歌第7世代』とよばれるユニットができたり、演歌界でも若い方が続々と登場されて、演歌の印象が変わっている気がします。

 

 そうですね。ステージで演歌を歌っているとき以外は、みんな普通にどこにでもいる10代、20代です。

 僕たちはポップス、ジャズ、洋楽……なんでも歌うと思います。表舞台に立ったきっかけが「演歌」だったんです。僕の個人的な感覚ですが、自分自身のことを「歌手の○○」と言っている気がします。「演歌歌手の○○」ではないんです。なんでも歌える歌手になりたい、限定的なジャンルにとどまらないという意味だと思います。ステージ衣装やダンスなどのパフォーマンスも含めて、個性が出てくるようになったのが今の演歌界かなと思います。

 

――演歌界は、「師匠への弟子入りからスタート」という印象が強いです。

 

 演歌の師弟構造も少なくなってきていると思います。作曲家の水森英夫師匠の門下生である僕もその1人です。

 

――『演歌第7世代』で今後の演歌について話すことも?

 

 あります。夜中の2時くらいまで話が止まらないことも……。どうやって僕たち第7世代のステージを楽しんでもらえるかを語り合います。

 僕たち『演歌第7世代』はユニットですが、同じ衣装を着たり、色違いの衣装を着たり、5人で1曲歌ってるわけではありません。その縛りもないからこそ、それぞれ自分の色が出しやすいんじゃないかなと思います。

 集まるといつも、男子校のような雰囲気です(笑) 「リーダーポジション」「末っ子ポジション」「お笑いポジション」など、それぞれ役割があるかも。でも僕は、特定のポジションに収まりたくないタイプです(笑)

 

――現在25歳。今後の目標は何ですか?

 

 レコード大賞へのノミネートや紅白歌合戦(NHK)への出場は、もちろん目標のひとつです。しかし、二見颯一のコンサートでしか見られないものを作り出したり、歌手としてのブランドをもっともっと高めることも必要だと思っています。「二見颯一の歌を聞いていただく」というのが、ステータスになったらいいなと思います。

 「すばらしい演歌歌手がたくさんいらっしゃる中で僕を選んでくれる」。そのくらいの何かを持てるようになりたいと思います。

 

――演歌界を担う世代として不安は無いですか?

 

 「演歌界の縮小」という話は数十年前くらいから出ていたのかもしれませんが、実際に今、僕たちのような若い世代が多いんです。これからもずっと歌っていく世代ということです。演歌の将来は今後、より良くなっていくのかなと思います。

 

――今の若い世代が40歳~50歳くらいになった頃には、聞く人たちも一緒に年を重ねているわけですから、演歌に対するイメージも変わり続けますよね。

 

 そうですね。演歌の歌詞って年を追うごとに重なってくるものが多いと思います。歌っている僕たちでさえ、まだ重なってないわけです。たとえば、「寄り添い合った夫婦」というのを知らないまま、妻や夫を思って書かれた歌を歌うんです。しかし僕たちも年を重ねる度にいろんな経験を積んでいきます。それと同じように、聞いてくださる同年代の若い方たちも、徐々に共感してくださるのかなと思っています。

 


二見颯一

ふたみ・そういち 演歌歌手。1998年生まれ、宮崎県国富町出身。2023年10月にデビュー5周年記念曲の2作目、年上の女性への思いを歌った新曲「罪の恋」(カップリング曲は「さよならの街角」)を発売。

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