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佐々木良さん
無碍山房 無碍山房濃い抹茶パフェ

無碍山房 無碍山房濃い抹茶パフェ

 京都の料亭・菊乃井さんで一昨年に結婚式を挙げたのをきっかけに、お隣の無碍山房さんを知りました。

 本来甘いものは好きじゃないのですが、「甘そう」より「おいしそう」だったんです。普通のパフェは最後はべちゃべちゃになるのに、こちらは最後まで抹茶を楽しめる。おなかはいっぱいになるけど、無駄がないのが巧みです。

 妻との出会いはコロナ禍でした。不要不急の外出自粛、店の多くが臨時休業。その頃僕は、約1300年前に奈良で編まれた万葉集を令和語に訳そうと、当時住んでいた香川から奈良に通い、かき氷店などで若者言葉を調査していました。奈良時代の恋の障壁はというと、身分の差もありましたが、距離が大きかったと思います。歌人・大伴家持は、奈良に住む女性との遠距離恋愛を和歌で嘆いています。当時の恭仁京と平城京、近そうで会えない微妙な距離ですから、会えたときは燃えるのでしょう。

 関西で調査をしていた頃、僕は妻と初めて食事に行くことになり、2時間後にプロポーズをしました。10日後には結婚生活をスタート。

 今は京都住まいです。抹茶パフェのためだけに、祇園行きバスで家とお店を往復しています。頑張れば歩いても行けるので、次はパフェの帰りに祇園さんを回ろうかな。

(聞き手・島貫柚子)

 ◆京都市東山区下河原通高台寺北門前鷲尾町524(☎075・744・6260)。1760円。午前11時半~午後5時。(満席の場合は整理券を発券)。原則(火)休み。


  ささき・りょう 作家。1984年生まれ、大阪府出身。「誰が買うねん」と初版500部で刊行した、万葉集の令和言葉・奈良弁訳「愛するよりも愛されたい」がヒットし、続編「太子の少年」「式部だきしめて」と合わせて25万部突破のベストセラーに。

(2024年3月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)