「動物園でもないのにケモノっぽい場所がある」。高校生のころ、吹奏楽部の友達がそんな変なうわさをしていて、出どころの阪急電鉄・仁川駅で降りてみると、一軒の博多ラーメン店がありました。
あの豚骨のにおい――。初めは強烈に感じました。でも今となっては食欲が止まらなくなるんです。パブロフの犬みたいなもんです。替え玉は必ず2回。僕の中で、しぇからしかは3杯1セットなんですよ。少しゆったり味わったり、アウトローに攻めてみたり。カウンター数席だけの店内は、豚骨のにおいが充満する中、ブルースがずっと流れていて、店の空気自体、パンチ利いてますよね。
大学生のころは情報誌「ラーメンWalker」片手に食べ歩きをしていました。現在、指揮の仕事の活動拠点にしているベルリンにもラーメン店はあります。でも僕からすると、欧風にあっさりしすぎていて、あれは「おすまし」なんです。帰国したら、多ければ週4ラーメンです。地方公演でも会場最寄り駅のラーメン店を検索します。
この取材が終わったら大阪に帰るので、夕方にはしぇからしかのラーメンをすすっているでしょう。DNAに染み込んでいるというか、あれがないと、僕の人生じゃなくなる気がするんです。
(聞き手・島貫柚子)
◆兵庫県宝塚市仁川北2の10の30(電話0798・51・4400)。800円。午前11時~翌午前2時。((日)は午後9時まで)。兵庫と大阪に5店舗。「どこにも負けない博多ラーメンを関西に広める」のが創業時からの思い。
でぐち・だいち 指揮者。1989年生まれ、大阪府出身。5月4日、東京国際フォーラムでシエナ・ウインド・オーケストラと共演。11日に大阪のザ・シンフォニーホール、18日に兵庫県立芸術文化センターでも公演。
しぇからしか