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今、リコーダーがきてる!!
栗原正己さん

 幅広い音域と誰でも簡単に音が出る手軽さが特徴のリコーダー。小学校や中学校の音楽の授業などで演奏経験がある方も多いのではないでしょうか。筆者は学生時代に吹奏楽部に所属していたため、ジャズ、クラシック、ポップスと様々なジャンルを演奏したことがありますが、どのジャンルにもリコーダーがメンバーに入っていた記憶はありません。そのため教育楽器としての印象を強く持っていました。
 そんな中リコーダーを中心楽器としたインストゥルメンタルバンドがあるということを知り、ぜひお話を聞いてみたい!と、「栗コーダーカルテット」メンバーの栗原正己さんに取材を申し込みお話を伺いました。 (聞き手・中山幸穂)

※栗原正己さんは5月23日(木)朝日新聞夕刊「グッとグルメ」に登場しました。

 

▼「栗コーダーカルテット 2020-2021 新曲とレア曲の夕べ」ダイジェスト

 

――今年公開された大ヒット映画の「ドラえもん のび太の地球交響楽」に栗原さんの音が使われているとか。

 そうなんです。のび太のリコーダー演奏を担当しています。最初はいかにも小学生らしい下手な演奏をイメージして努力して演奏していたんですけど、ある程度上達してきた演奏は僕が一生懸命やったくらいで丁度いいくらいの演奏になっていて、ちょっと微妙な気持ちもあるんですけど(笑)、他の人には出せない独特な音が出せたかなとは思います。



――栗コーダ―カルテットのHPを拝見しました。「突然のマイブームでリコーダーを手にし~」と記載されていましたね。リコーダーに目覚めたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

 実はあまり自分でもわかっていないんです。1992年の冬、突然、「俺はリコーダーを吹かなければ」と思ったんですよね。なんとなく。それまではエレキベースなど、どちらかというとメロディーを支える役割を担った楽器を演奏していたのですが、リコーダーはメロディーが吹けるなと思って。やってみたらなんだか楽しかった。

 

――リコーダーは教材としても使用されていますよね。小中学校時代から得意だったのでしょうか。

 小学校で吹いていた時は苦手でした。ただ音楽自体は好きだったので、中学校で吹奏楽部、高校ではバンドを組んでと音楽に触れながらずっと生きてきました。大学在学中に音楽の仕事がアルバイトで入るようになり、そのつながりからCM音楽制作の仕事などをするようになっていくんです。

 CM音楽を作っていた頃は、コンピュータを使った打ち込みならではの音を中心にして、それまで聴いたことのないような音をつくるっていうのをずっとやっていました。そんなCM音楽期みたいな時期が数年続いた後でしょうか。リコーダーに目覚めて、改めて生の音の情報量の豊かさに感動したんです。今は実際に演奏をしなくとも生と区別がつかないくらいいいソフト音源が売られていたりするんですけど、当時はそこまで技術が追いついていないので、例えばドの音を入力すると、どんな場面でも同じ強さ、ニュアンスのドの音が出るわけですよね。でも生演奏だとそういうことはなくて、例えば自分でドの音を吹いても微妙な強さでかわる。打ち込みの信号を再生しているような感覚も楽しいし満足していたんですけど、生で音を出す、その場で空気が振動することの不確かさや一回性にすごい惹かれちゃったんですよね。

 それまで素朴な楽器という認識だったんですけど、自分が吹くようになってから楽器について調べたくなって色々資料を買いあさっていく中でこの楽器の奥深さがわかりました。例えばクラシックの演奏家のみなさんなどは技術がすごいんですよ。

 

――クラシックの演奏でリコーダーを使用するところはあまり見たことがない気がします。

 あんまり知られてないと思うんですけど、楽器自体の歴史がちょっと特殊で、バロック時代以前は意外と使用されているのですが、その間にあたる古典派やロマン派、いわゆるモーツァルトやベートーベンなどが生きていた時代には全然使われていなくて。だから今の人たちには想像がつきづらいんですよね。楽器としてはフルートがリコーダーの後に出てきます。フルートは音も大きいし表現力もあるし音色も華やかなので、どんどんリコーダーが下火になっていくんですけど、1960年代前後に古楽という、昔の時代の音楽を昔の楽器のまま、昔の考え方で演奏するっていうブームが出てきたり、また別のベクトルでは教育楽器として使用されたりしてすこしずつ復活してきました。

 

――バロック以前に存在していた事に驚きです。かなり昔からリコーダーは存在していたんですね。

 そうなんです。大昔に今とほぼ同じものができあがっていたんですね。今のデザインはバロック時代のものをコピーしたものなんです。

 

豆知識!リコーダーの歴史


ルネサンス時代(15~16世紀):現在のリコーダーの形として完成。 アンサンブルなどで使用される。

バロック時代(17~18世紀半ば):全盛期。教会や王宮で奏でられることも多く、 当時の絵画にも登場している。

古典派(18世紀半ば~19世紀前半):フルートが台頭しだし、徐々に演奏期会が減っていく。

ロマン派(19世紀):リコーダーの演奏記録はあまりなく、下火となる。

近代・現代(20世紀~):古楽ブームや優れたリコーダー奏者が誕生したことで光があたる。教育楽器として再び広まる。

参考:ヤマハ https://www.yamaha.com/ja/
   谷川リコーダー教室 https://recorder-lesson.sakura.ne.jp/recorder/



――栗コーダーカルテットはもともと一回きりのバンドだったそうですね。

 元々のきっかけは、「たま」っていうバンドのギター担当だった知久寿焼さんのソロで笛を使って伴奏するようなライブをやったこと。当時既にリコーダーにハマっていたので、知久君から笛の音が好きだという話をきいて、知久君の歌を笛で伴奏するようなライブをしてみたらどうかと話が出たんです。

 そのとき一緒にいたのが今のメンバーの関島岳郎と川口義之。ライブ自体一回きりのつもりだったんですけど結構面白くて、その後も知久君なしでライブを時々やるようにしていたのが未だに続いている感じです。

 と言っても、栗コーダーカルテットだけの活動をしている訳ではなくて、例えば僕は個人で音楽制作をやっていますし、川口はサックス、関島はチューバ奏者で色々なツアーやセッションに呼ばれたりと、それぞれ別の現場を持っているので、バンドの活動とバランスを上手く取りながらやっています。栗コーダーだけだといろいろ運営が成り立ちにくいところがあるんだろうけど、そうではないのでそれが良かったのかもしれないですね。

 

――使用する楽器は曲に合わせて決めているのでしょうか。それとも使いたい楽器を想定して曲を作っているのですか。

 両方です。例えばダースベイダーのテーマである「帝国のマーチ」のように、「この曲をカバーしてください」みたいなお題で来る時は、どの楽器をチョイスしたら曲が面白くなるのだろうかっていうのを考えて、基本的にはライブで演奏できるように四つの楽器で組み立てています。難しいですが楽しい作業でもあります。

 楽器は色々やりますけど、自分たちが得意な楽器と制御がしにくい楽器を組み合わせて面白い音を作れないかといった不自由なところも音楽作りに活かすようにしています。

 

――曲は皆さんで毎回考えを持ちよって決めていくのですか。

 ゼロの段階からみんなで集まってできたものっていうのは滅多にないです。曲ごとに中心になる人を割り振って、その人が考えてきたプランをみんなで検討していく感じです。最初にみんなで集まって笛を吹こうって言い出したのは僕なんですけど、バンマスなしで全員で相談しながら進めていく、そういう状態になっていますね。みんなそれまでに様々な音楽活動をしてきているので、それぞれのフィールドで得てきた音楽作りのアンサンブルの方法論とリコーダーを混ぜて、それで音楽を作っていくのはすごく新鮮だったんです。それが今でも続いているんですかね。



栗原正己 くりはら・まさき
 1959年生まれ、東京都出身。「栗コーダーカルテット」のメンバー。メンバーは関島岳郎と川口義之を合わせて3人。結成時は4人だったためバンド名に「カルテット」とついている。NHK Eテレ「ピタゴラスイッチ」の音楽や、通称「やる気のないダースベイダーのテーマ」などでもお馴染みのインストゥルメンタルバンド。リコーダーのほかに、ピアニカ、アンデス25、ベースなども演奏。

オフィシャルHP:http://www.kuricorder.com/
X:https://x.com/kuricorderhttps://x.com/kuricorder

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