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池坊専好さん
「麩嘉」麩まんじゅう

 蒸し暑くなると京都に夏が来たと感じます。川床で涼をとったり、祇園祭のお囃子があちこちで聞こえてきたりと、7月は楽しみが増える時期でもあります。そんな夏の初めに食べたくなるのが、この麩まんじゅうです。
 こんなに涼やかでみずみずしく、もっちりおいしいお菓子って他にありますか。丹波大納言のこしあんが青のりを練り込んだ生麩で包まれ、甘さも口当たりも上品。江戸時代から続く麩嘉さんはササの保護にも取り組まれていて、清涼感のあるササの香りから、同じく伝統を受け継ぐ立場の覚悟が伝わってきます。
 お店の方に伺うと、お麩には京都の地下水が大切と言われるんです。気温などによって作り方も工夫しているとか。生け花にも水際という言葉があるように、水は色も形もなく主張はしないけど、すべての源という考え方は同じです。お麩も派手さはないのに、料理によって変幻自在に姿を変える。麩まんじゅうには京都の知恵や奥ゆかしさが詰まっていると思います。
 私は大阪・関西万博で協会副会長を務めています。万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」は、「池坊いけばな」の心にも通じています。日本の豊かな食文化を発信する機会にもしたいですね。

 (聞き手・鈴江元治)

 

 ◆京都市上京区西洞院通椹木町上ル東裏辻町413(☎075・231・1584)。1個270円。午前9時~午後5時、月曜休み。本店では事前に要予約。オンラインショップ(https://fuka-shop.com/)も。

 いけのぼう・せんこう 華道家元池坊の次期家元。1965年生まれ、2015年に「専好」を襲名した。紫雲山頂法寺(六角堂)副住職。一般財団法人池坊華道会副理事長。今年も11月に、高校生の生け花日本一を決める「花の甲子園全国大会」を京都で開く。

 

 

(2024年7月11日、朝日新聞夕刊掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)