これまでに、CMやドラマなど約650本に登場する料理を手がけてきました。

　「のり巻き志乃多」は、CM撮影の時に差し入れでいただいたのですが、初めて食べた時は「何これ、すごいおいしい！　どこのおいなりさん？」と驚いてしまいました。

　食べると中から甘みがじゅわっと出てくるおいなりさん。店名と同じ「志乃多」の名前がついています。揚げは薄めですが、砂糖やしょうゆのしっかりとした味付けです。のり巻きは、かんぴょうの長さと細さが絶妙。シンプルだけど、味の主張もあります。

　おいなりさんは幼い頃から好きで、よく母や祖母が作ってくれました。今は自分でも作りますが、揚げの厚みによって味の染み込み具合も変わるので、難しいんですよね。

　ドラマに出てくる料理は、登場人物たちの生活の一部です。主人公が料理が苦手なら、わざと焦がすなどして、下手に見えるように作りますし、撮影のタイミングで迅速に料理を出さなければなりません。作品の雰囲気に合わせて作ったつもりでも、当日修正を求められることもあります。

　「のり巻き志乃多」を食べたくなるのは、疲れている時。「ちょっと休んでも良いんじゃない？」。そう言ってくれている気がします。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（聞き手・斉藤梨佳）

　◆東京都中央区日本橋人形町2の10の10（☎03・5614・9300）。778円。【前】9時～【後】7時。１月１日は休み。日本橋三越本店、日本橋高島屋などでも取り扱い。新宿高島屋地下1階の「味百選」では【火】【木】【日】のみ販売。

　フードコーディネーター。「VIVANT」（TBS系）、「ドクターX～外科医・大門未知子～」「ザ・トラベルナース」（テレビ朝日系）など、数多くの作品を担当。メニュー開発なども行う会社、Vita代表取締役。

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