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古内一絵さん
ビーフン東 バーツァン(中華風ちまき)

 映画会社に勤めていた頃、すごく忙しくてお昼にゆっくり時間をかけていられませんでした。でもここは会社から近くて、座って3分ぐらいで出てくる。さらにおいしいので同僚たちも頻繁に通っていました。

 ランチはビーフン3種類で「焼き」か「汁」のパターン、あとはバーツァンとメニューが少ないんです。私は大体並の焼きビーフンを小盛りにしてバーツァンをつけていました。

 バーツァンの中にはもち米に豚バラ肉、ピーナツ、シイタケとうずらの卵と具だくさん。ピーナツが入っているのが珍しい気がします。2人で行ってバーツァンを一つ頼むと、半分に切って提供してくれます。すごいのは必ずうずらの卵まで半切りにしてくれるんですよ。

 バーツァンは中国語だと肉粽(ローツォン)という発音になりますが、それを台湾語で呼んでいるところが本格的だなと思います。普通バーツァンと言ってもなにかわかんないじゃないですか。でもこのお店に行くと全員がバーツァンで認識していて面白いです。

 ここでしか食べられない味なので、今でも時々同僚だった人々と行きます。変わらない味が食べられるのがうれしいです。20~30代の忙しく働いていた時代を思い出す青春の味ですね。

(聞き手・中山幸穂)

 

◆東京都港区新橋2の20の15の1号館2階(☎03・3571・6078)。700円(夜770円)。平日午前11時半~午後2時(1時45分ラストオーダー)、5~9時(同8時)。(土)は午前11時半~午後1時半(同1時15分)。(日)(祝)休み。

ビーフン東HP:https://www.bi-fun.jp/


 ふるうち・かずえ 1966年東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。2011年に「銀色のマーメイド」で作家デビュー。「マカン・マラン」シリーズ(中央公論新社)、「フラダン」(小峰書店)、「キネマトグラフィカ」シリーズ(東京創元社)など著書多数。最新刊は「風の向こうへ駆け抜けろ3 灼熱のメイダン」(小学館)。https://www.shogakukan.co.jp/books/09386747

(2025年3月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)