大学院生の時、地元の友達と歩いていて見つけた店です。店名より大きく「一部の人に理解される」と書かれた看板。どこから入ればいいのか分からない独特な雰囲気の店構え。「どんなお店なんだろう」と気になって入ってみたんです。

　メニューは「スリーコースセット」のみ。パキスタンカレーとサラダ、チャイのセットで、量が多くて値段も手ごろです。

　カレーは、前の店主がパキスタンで振る舞われた味を、帰国後に再現したもの。水は一切使わずに約１時間かけて肉と野菜を煮込み、10種類以上のスパイスと塩で味付けしています。鶏肉は軟らかく、ほろほろとほぐれていくほど。素材の味を感じられるおなかにも優しい味付けです。全部食べると太い鶏の骨が１本だけ残るのも面白い。メニューが一つなので、悩まずぱぱっと食べて帰れます。

　料理はもちろん、「一部の人に理解される」というモットーが大好きです。店に出会ったのは、アニメやメジャーアイドルの作詞を任されるようになり、専業になるか就職するか迷っていた頃。この言葉に励まされ、プロの作詞家への道を進んできました。詞を書く時は、みんなに好かれることを意識して八方美人になるより、誰か一人に共感されることを心がけています。

（聞き手・三浦旋律）

 　◆横浜市神奈川区西神奈川3の9の2（☎045・294・2136）。スリーコースセット1500円。午前11時半～午後3時、5時～8時。（土日祝は午前11時半～午後8時）。木曜と第３水曜休み。カレーはオンラインで購入可。

　こだま・あめこ　作詞家、小説家。1993年生まれ。高校生から作詞を始め、アイドルや声優の楽曲、アニメの主題歌などを手がける。小説「##NAME##」は第169回芥川賞（2023年上期）候補作。