10種のカレーから選べるプレートですが、僕は決まってこの3種。看板メニューで10種以上のスパイスが利いた「エリックチキンカレー」と、ココナツなどの甘さが感じられる「マラバール風キーマカレー」、そして酸味が特徴的な「ゴア風ポークビンダルー」です。

　チキンとキーマは粘度と辛さがあるカレーですが、ポークビンダルーはまるで別物。豚肉をかんでいくとふわっと香りたってきて、味の輪郭がくっきりします。南インドらしい、しゃばしゃばなルーも好みです。

　初めて訪れたのは約3年前。当時、同居していた大学時代の友人がよくカレーを作っていたんです。一度ポークビンダルーが出てきて、食べたことのなかった風味が印象に残っていました。メニューで見つけて、「店ではどんな味なんだろう」と注文して以来、定番になりました。

　プレートはサラダ、チキン、キーマ、ポークビンダルーと一巡して、あとは好きな皿を行き来します。異なる舌触りの三つのカレーは楽しいメニューです。

　自分が詠む短歌には、食事風景を切り取った作品が多くあります。このカレーはトッピングなど、自らのさじ加減で創作者になれる。丸い皿で囲まれた独立した世界に穴を開ける感覚。文学的な要素を感じます。

（聞き手・大石裕美）

◆東京都渋谷区神宮前6の19の17の5階（☎03・5962・7888）。3種1240円（ゴア風ポークビンダルーはプラス100円）。午前11時半～午後3時、5時半～10時（ラストオーダーは各30分前まで）。火曜と年末年始休み。

すずき・じぇろにも　お笑い芸人。1994年生まれ、栃木県出身。短歌研究新人賞や笹井宏之賞の最終選考に残るなど、歌人としても活動。ポッドキャスト番組「鈴木ジェロニモの感情」を配信中。著書に「水道水の味を説明する」（ナナロク社）。