病気で数年前に亡くなった母方の祖父が「最後に食べたい」と言っていたものが二つありました。一つはパイナップルの缶詰、そしてもう一つがこのラーメンです。祖父母の家が北海道の旭川にあり、蜂屋さんには小学生のころから何度も通っています。家族の思い出が詰まっています。
豚骨と魚介のスープに中太ちぢれ麺がよく絡みます。具材はチャーシュー、ネギ、メンマとシンプル。豚の脂身などを焦がした「焦がしラード」は、ラーメンの表面に黒い膜をつくり、クセのある香ばしさが病みつきになるんです。
スポーツ好きの祖父は、私がフィギュアスケート選手になったことを誰よりも喜んでいました。亡くなる前にみんなで食べに行ったときも本当にうれしそうで。家族の心が通じ合ったと実感した瞬間でした。みんなで麺をすすったあの日を思い出せるので、落ち込んだら食べたくなります。
このラーメンと私は似ている気がします。私の個性は高い声と積極的な性格。このラーメンは焦がしラードの香りが独特です。ともにクセがあると感じる人がいるかもしれないけれど、ブレずに個性を大切にすれば、自分を好きでいてくれる人たちにもっと好きになってもらえる。自分と重なって心強いです。
(聞き手・斉藤梨佳)
◆北海道旭川市3条通15の左8(☎0166・23・3729)。930円。【前】10時~【後】3時20分ラストオーダー。【水】、12月31日、1月1日休み。創業店でも販売。
たかはし・なるみ タレント。1992年生まれ、千葉県出身。フィギュアスケートのペア選手として2014年に木原龍一選手とソチ五輪に出場。現在は日本オリンピック委員会(JOC)評議員も務める。
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