スマホでラーメン日記をつけています。300杯以上記録した最初がこの一杯。大学時代、近くに下宿していて出合い、今も人生で一番おいしいと思っています。
宗田がつお節や丸鶏、豚骨などでとったスープは和食の上質な一番だしのよう。小麦が香る細麺とよく絡みます。海外公演から帰ると必ず食べに行き、ユズの香りと具材の水菜に日本を実感します。
スープの色が淡いのは小麦を主原料にした白しょうゆを使っているから。絵になるラーメンで見た目も味も洗練されています。94歳の祖父、野村万作のように、狂言は年を重ねるほど芸が研ぎ澄まされるのが魅力。このラーメンの洗練も作り手が様々な経験を重ねた先の結実なのでしょう。
世阿弥の教えに、自身を客観的にみる「離見(りけん)の見(けん)」があります。僕が慶応義塾大の政治学科に進学したのは社会学的に広い視野から狂言を客観視してみたかったから。5月には大学で学んだ哲学者プラトンの言葉を冠した「狂言イデアの会」を主宰します。僕は「イデア」を心の目で見るもののこと、と解釈しています。体ひとつで様々な場面を想像させる狂言と通じます。
大学時代は多くを蓄積した目まぐるしい日々でしたが、このラーメンが息抜きになっていました。
(聞き手・中村さやか)
◆東京都目黒区鷹番2の4の9(☎03・5722・1669)。1100円。午前11時半~午後2時45分、午後6~9時(営業時間はインスタグラムで要確認、スープが無くなり次第終了)。不定休。