カレー店を巡り歩く僕に、ラジオで共演した加藤紀子さんが教えてくれたスリランカカレーの名店です。店主の義父が母国に帰って焙煎(ばいせん)するスパイスは、香りの深みが違います。さらっとした液状とは思えない、コクのあるまろやかなうまみが押し寄せます。
軟らかく煮込んだ豚のかたまり肉をカレーになじませながら食べると、バランスよく最後までおいしい。ピクルス代わりの口直しに、香りのよいスリランカの紅茶も頼みます。
洋食文化のある神戸生まれ。幼いころ、店でカレーを頼むと「ご飯の白いとこがなくなるまで混ぜてぇ」と父に甘えたものです。
学生時代に通った地元のカレー屋は閉店時間が早かった。ある日、人混みを急ぐ途中、年配男性に当たって倒してしまいました。その場にいた大男が僕を取り押さえる中、年配男性は「自分が悪いんだ」と必死に制してくれました。その人は後の総理大臣、宮沢喜一さんだったんです。おかげで店にも間に合って、宮沢さんは恩人です(笑)。
僕は落語をやったり、下北沢のカレー店のオーナーであったりしますが、何かを「探究」できない性分。座右の銘は「中途半端」です。結果的に打ち込んでいたのは楽しんだから。探究ではなく「偏愛」なんです。
(聞き手・中村さやか)
◆東京都渋谷区宇田川町34の6M&Iビル5階(☎03・6455・3216)。1800円。午前11時半~午後2時半、午後6時~10時(いずれもラストオーダー)。月休み(不定休あり)。