バンド名「クラムボン」は、宮沢賢治の童話「やまなし」からお借りしました。デビューして盛岡へ行った時、「盛岡でクラムボンといえば喫茶店だよ?」と聞き、ごあいさつに行きました。
当時はコーヒーが苦手でしたが、マスターの高橋正明さんのブレンドを飲んで、生まれて初めてコーヒーというものを「おいしい」と思えました。注文を受けてから、1杯ずつ、1滴ずつ丁寧にいれてくれる。飲食に無頓着だった私には、驚きと感動の味わいでした。
それから岩手に行くと、できるだけ立ち寄るようになり、交流が始まりました。ライブハウスに見に来てくださって、差し入れに豆をいただき、自宅でもいれるようになりました。
いつも静かに応援してくださったマスターは7年前に他界されましたが、娘の真菜さんがお店を受け継がれました。焙煎(ばいせん)の香りに包まれた空間、焙煎機、レシピ、「ブラジル」「グアテマラ」と缶に書かれたマスターの文字も、大切に守られています。真菜さんが愛情深く、1杯ずつ、1滴ずつ、丁寧にいれてくれるコーヒーはとてもおいしく、やさしい味わいがします。そしてやっぱりプリン。香り高くコクがある深煎りのブレンドといただくと至福です。
盛岡にクラムボンがあることは、私にとって今も特別なことなんです。
(聞き手・片山知愛)
◆盛岡市紺屋町5の33(☎019・651・7207)。750円。午前11時~午後4時(ラストオーダーは30分前まで)。豆(100g、750円)の販売は午前10時~午後5時。日水木休み。豆は電話で取り寄せ可(送料別)。