魚が好きで、肉よりも海のものに心が動きます。そんな僕がアワビのしゃぶしゃぶを初めて食べたのは、芸能関係の友人が青森市内で営む店に仲間たちと集まった時のこと。料理を楽しんでいると、見慣れない皿が運ばれてきたのです。
透き通るほど薄く切られたアワビ。「これは何だ?」とみんな首をかしげました。聞けばしゃぶしゃぶで、陸奥湾産の新鮮なアワビを薄切りにし、昆布だしの入ったつゆにくぐらせるのだとか。
正直、アワビといえば刺し身かバター焼きくらいしか思い浮かばず、しゃぶしゃぶで食するなんて発想外。各人に用意された小鍋に自分の好きな加減でさっと湯にくぐらせる。ポン酢もあるし、ごまダレもある。
ほんの数秒泳がすだけで、アワビは刺し身とも焼き物とも違う表情を見せるのです。くぐらせる時間次第で、コリコリ感を残せたり、柔らかな甘みも出せたりと、アワビのおいしさを自在に堪能できます。
もう十数年、ねぶた祭りにあわせて青森を訪れています。祭りを眺め、仲間と笑い、うまい物を食べる。顔見知りも増え、田舎のない僕は青森県人になっちゃおうかなと思うぐらい好きになっています。年齢を重ねると、料理そのものだけでなく、誰と食べたかも大事になります。アワビのしゃぶしゃぶは珍しさだけではなく、友人たちと囲んだ時間や青森の海の豊かさまで詰まった大切な一品です。
(聞き手・倉持裕和)
◆青森市本町5の4の23(☎017・774・8899)。1人前5500円~(サイズなどにより変動)。午後5時~午前0時。日と第1・第3月休み(祝前日の日は営業)。