私にとっての「塩そば」とは、活力を与えてくれる滋養の点滴であり、涙の乾きを癒やす味でもあるんです。
41歳にもなって幼児向けキャラクターから場末の娼婦(しょうふ)役まで、演劇、演劇、演劇……でやってると、楽しさは無論、悲しみや怒り、苦しみなど、ままならない感情に引き裂かれそうになる時もしばしば。こぼした涙や拭った汗の塩分を補い、精神的にも肉体的にも支えてくれるのが、やさしい味の心洗われるような澄んだスープなんです。
「極み」は完全形の一杯! 出されたら頷(うなず)くか、黙るしかない。真空低温調理された豚と鶏むね肉、煮込んだ鶏もも肉のチャーシューが超絶ジューシーで、穂先メンマも軟らかくて絶品。下町風情の店構えに反し、店名である朱雀を見立てた上品な盛り付けとお味です。量もあるので満足度が半端ない。「最後の晩餐(ばんさん)」的な一品ですね。
世の中には、幸福な人もそうでない人もいて千差万別。幸せな人にはより笑顔を、弱ってうつむいた人には、私にとっての〝塩そば〟のような演技を届けられる女優でありたいです。
◆千葉県船橋市本中山3の14の21(TEL047・302・7240)。
1000円。
午前11時~午後3時、6時~11時((日)(祝)は11時~8時)。
(月)休み。
のぐち・かおる 女優。
NHK・BS「おとうさんといっしょ」にポッポ役で出演中。舞台「私のホストちゃん」(1月19~28日、東京・池袋)、「演劇部のキャリー」(2月22~28日、東京・下北沢)に出演。