NHKの「コメディー お江戸でござる」に出演していたころ、まだ初期だったと思いますけど、番組内のコーナー「おもしろ江戸ばなし」に出ていらした江戸風俗研究家で漫画家の故・杉浦日向子さんに連れていっていただいたお店です。日本酒が好きだとおっしゃっていた杉浦さんは、鴨汁のおつゆをつまみに熱かんを飲んで、締めにせいろを召し上がっていたんです。汁物をおつまみにして飲むんだ!?って驚きましたが、でも格好良いなあって。感動したことを覚えています。
鴨汁のおつゆは、粉山椒(こなざんしょう)が利いたちょっと濃いめの味。このおつゆと、なかに入っているネギや鴨肉をアテに日本酒を飲む、というのが乙でしたね。まだ日の高いうちからおそば屋さんに行って、お芝居のことを語り合いながらお酒をいただく、ということがとても特別な感じがしたんです。
締めにいただいたのは田舎せいろです。普通のせいろもありましたけど、太くて歯ごたえがあって、味わい深い田舎せいろが私好み。冷たいおそばと温かい鴨汁の組み合わせが、日本酒を飲んだあとにぴったりでした。
◆東京都渋谷区神山町5の7(問い合わせは03・3466・4600)。
鴨汁、田舎せいろ各850円。
正午~午後3時(売り切れ次第終了)。
(土)(日)(祝)(休)休み。
しげた・ちほこ 俳優。
1957年生まれ。NHKで95年~2004年に放映された「コメディー お江戸でござる」などに出演。今秋、故・黒澤明監督の映画をミュージカルにした「生きる」に出演。