ここは、イタリアのスローフード運動についての本「スローフードな人生!」を出す前の1990年代によく通っていました。ボローニャ大に留学していた友だちの紹介です。
魚系のパスタが食べたくて頼んだのがこの一品。カリッと焼いたイワシの切り身と、フィノッキ(ウイキョウ)の爽やかな香りがフワッと漂います。
白ワインとオリーブオイルがベースで、色んなものを足して作るのではなく素材の組み合わせで味の妙を引き出している。
当時はまだ、こういうイタリアの日々の食卓に出るけれど、斬新で日本人の舌にも合う料理を出すお店は珍しかった。
85年に初めてイタリアに行き、そこで食べた素朴ながらも素材を生かした味を思い出させる一品です。
あの頃は九州から出てきて、日々緊張しながら仕事をしていました。
ちょっと疲れた時にこのイワシのパスタと鹿のカルパッチョを頼むのが定番で、イタリアへの愛を再確認でき、イタリアのことをもっときちんと勉強しようと思えたのは、この味のおかげです。
今はもうメニューに載せていませんが、材料さえあれば注文に応えてくれるそうです。
◆東京都渋谷区神宮前3の38の12の地下1階
(問い合わせは03・3497・1586)。
1550円(税、サービス料別)。
フィノッキがない場合、セロリとフェンネルシードで代用。現在は短縮営業で午後5時半~9時半。
(火)休み。
しまむら・なつ ノンフィクション作家。
「エクソシストとの対話」で第5回21世紀国際ノンフィクション大賞(小学館主催)優秀賞受賞。イタリアのスローフード運動を日本に紹介した。