麺の量が多いんですよ。食べても食べてもスープの下からあらわれる。食べきれるか不安になるけれど、のど越しの良い太さのちぢれ麺が程よいとろみのスープとうまくからんで、いつも完食。スープの具材はタケノコ、ピーマン、ハム。それから、仕上げに加えられる溶き卵。酸味が少し強くて、あとからちょっとの辛みが口に広がるんです。そのバランスが絶妙ですっかりやみつきに。
初めて食べに行ったのは20年くらい前かしら。前に勤めていた職場の若いスタッフが「近くに安くておいしい中華料理店がある」と教えてくれて、昼時に行ってみたんです。2階建ての店内は昭和の懐かしさが漂う、こぢんまりとしたつくり。迎えてくれるのは、東京・赤坂の有名中華料理店で修業を積んだご主人と、クラフトアートが得意な奥様。気さくな人柄の2人とおしゃべりしながら食事をする時間が楽しくて、一時期は毎週のように通っていました。長居するせいか、注文以外の食べものや手製のものをいただくことも。2020年の秋冬コレクションでは、奥様が作った造花を撮影の小道具に使ったんですよ。あんな人情味あふれる店は今時ないかも。私にとっては心安らぐ貴重な場所です。
◆東京都江東区新大橋1の4の13(問い合わせは03・3631・3652)。
750円。
午前10時~午後2時、6時~11時。
不定休。
つもり・ちさと デザイナー。
1954年生まれ。2018年にブランド設立29年目を記念した作品集「TSUMORI CHISATO」(米RIZZOLI)を出版。同年、「WAKU WORK 津森千里の仕事展」を開催。