今は熊本に住んでいるんだけど、新型コロナウイルスの感染拡大前までは大学の仕事で東京と熊本を行き来していたの。東京に行くときはいつも枝元(友人で料理研究家の枝元なほみさん)の家に居候している。何年か前、彼女が「ものすごくおいしいものがあるから食べてみない?」って作ってくれたのが、この五島うどんを使った梅とろろにゅうめん。これが本当においしかった。酔っ払った学生を連れて行った次の日の朝ご飯にも作ってくれたな。
彼女の料理って、普通はしないのに、というところで酢を入れたり、揚げたりして、常識を分からないように壊している。このうどんでは、梅干しが少しとがった要素に感じます。
五島うどんって、そうめんよりはずっと太いけれど、うどんよりはずっと細い。バランスが取れたコシがあって、品の良いうどんらしさがある。麺は食用ツバキ油で延ばしていて、コクもある。これは九州のものだ、と感じるんです。食べると、ツバキは天草にもたくさん生えていたな、天草は五島と海を挟んだ同じ文化圏だ、キリシタンが来たところだなとか、いろいろ考えてしまう。九州で生まれ育っていないから、余計に九州を感じるのかも。
◆東急百貨店各店、日本橋長崎館などで販売。
300グラム、希望小売価格420円=写真は調理例。
オンラインショップでも購入可。
問い合わせはますだ製麺(0959・42・0821)。
いとう・ひろみ 詩人。
1955年東京都生まれ。84年熊本県、97年米国に移住。2018年日本に戻り、早稲田大教授に。19年、種田山頭火賞を受賞。近著に「道行きや」(新潮社)。