世田谷で創業して55年、ご家族で営んでいる焼き肉店の温麺です。家が近所にあったころは週2ペースで通っていて、おばあちゃんとお母さん、それに若奥さんが一緒に調理する姿をずっと見てきました。5年前に店舗がリニューアルされて、今は3代目となる息子さんが先代の味を受け継いでいます。
店に行くと必ず頼むのが、「もみタン塩」と秘伝のタレをもみ込んだ「もみハラミ」。ナムルも必ずいただいて、締めに食べるのがこの温麺です。牛テールなどでだしを取った澄んだスープからは、ニンニクの香りが思ったよりもガツンときます。冷麺用のこしのある細麺が使われていて、スープと合わさり完璧な味に。具は斜め切りした白ネギのみとシンプルな分、凝縮されたうまみが広がります。
25年ぐらい食べ続けているのに決して飽きない、心身にしみついている感じです。疲れているときや風邪気味のときなど、自分が弱っているときにも食べたくなります。ニンニクの力で元気が出るし、すばらしい味と接客に触れると心も温まります。
小説もこつこつ書き続ける仕事ですが、家族が一丸となって店の味を守り続ける姿を見ていると、自分も真摯(しんし)に仕事と向き合おうと励みになりますね。
◆東京都世田谷区上馬4の41の2(問い合わせは03・3418・7496)。
715円。
午後5時~10時、(日)は8時まで(ラストオーダーは45分前まで)、要予約。
(月)、24日を除く(木)、29日~1月1日休み。
よしもと・ばなな 小説家。
近著に「吹上奇譚 第三話 ざしきわらし」など。「BANANA DIARY 2021-2022 力をくれるもの」、「note」で配信中の「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。