とろろが存在感を放っていてすごくおいしいんです。あたたかいそばにはとんぶり、冷たいそばにはジュンサイが添えてあって、シンプルだけどこだわりがあります。とろろって腹持ちもよく、高尾山にこれから登るぞっていう準備で食べるのにちょうど良く、元気が出るんです。
ある日、つい寝坊して予定していた山に行けなくなっちゃったことがありました。どうしようかなって思ったときに、通い慣れた高尾山にナイトハイクに行こうと思い立って、友人と2人で行きました。午後に高尾山のふもとに到着し、このお店でそばを食べてのんびり山頂へ。夕暮れを待っていると、地平線から赤く大きく見える月が昇ってきて、月が街を支配しているような幻想的で不思議な夜を体験しました。寝坊したのに得したな(笑)。
何をどこで食べたかっていうのを山の思い出とセットで覚えていますね。このお店は樹齢150年とされる柿の木が店内を貫いていて、柿にちなんだ献立があります。友人が干し柿の天ぷらを食べていて、私も食べればよかったな。食から山を知って、自然を感じるっていう楽しみ方があってもいいと思います。そういう価値観を大事にしたいですね。
◆東京都八王子市高尾町2209(問い合わせは042・661・0010)。
千円。
午前10時~午後5時[(土)(日)(祝)は5時半まで]。
(木)休み、夏季と冬季(いずれも7日間)休み。
営業日時はホームページで確認を。
よすみ・ゆり アウトドアスタイル・クリエーター、着物着付け師。
1979年埼玉県川越市生まれ。自分らしい服装で自然を楽しむ「山スカート」を提案。近著に「山登り12カ月」(山と渓谷社)。今年「にっぽん食名山(仮題)」を出版予定。