麺は細めでつるっとしたのどごし。色は濃いけれど、あっさりした味のおつゆは、そばの風味をひきたててくれます。わさびなどの薬味も、バランスがよくて、センスを感じます。一緒に食べるかき揚げは、見た目も美しく、量が絶妙。天つゆでいただくと、とてもおいしいんです。
私はドイツで生まれ育って、乾麺のおそばを食べていました。帰国して初めておそば屋さんに行ったときは食べ方がわからなくて緊張しました。舞扇さんの素晴らしいところは、味はもちろんですが、おそばやそば湯、お茶、ぜんぶちょうどいいタイミングで出してくれるところです。ドイツでは自分がどうしてほしいかを言葉で伝えることを求められるのですが、こちらでは間を読んでくれるんですね。そこに日本らしさを感じます。
翻訳や演出で海外作品にどっぷりつかることが多いのですが、ときどき日本の心を取り戻したくて、その粋な対応に触れに行きます。上の息子が15歳になったときに連れて行ったら、感動していました。コロナ禍もあり、ここしばらくは行っていないのですが、下の子がもう少し大きくなったら、今度は夜に行って、日本酒と一緒にそばを楽しみたいです。
◆東京都文京区小石川2の7の2(問い合わせは03・3816・8633)。
千円(平日ランチタイムのみ提供)。
午前11時半~午後3時、5時半~9時。(日)(祝)休み。
営業日時変更は公式ツイッターで告知。
こやま・ゆうな 翻訳・演出家。
2018年に「チック」で読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。翻訳・演出した「愛するとき 死するとき」(11月14日~12月5日)が東京・三軒茶屋のシアタートラムで公演される。名古屋・兵庫にも巡演。