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岸田奈美さん
「博多らーめん Shin-Shin」の博多ShinShinらーめん

「博多らーめん Shin-Shin」の博多ShinShinらーめん
「博多らーめん Shin-Shin」の博多ShinShinらーめん
「博多らーめん Shin-Shin」の博多ShinShinらーめん 岸田奈美さん

 前職の出張で私が訪れたのは住吉店。引き戸で、テーブル席があって、「車椅子の母も連れて来られるな」とびっくりさせられました。

 我が家は私と弟はこってり派で、母はあっさり派。そんな母が初めて「どんだけでも食べられる」と言った豚骨ラーメンで、まるで飲み物みたいなんです。しっかり豚骨のうまみがありつつ、おだしのような味もする。麺は博多風に吹かれたくて「バリカタ」でいただきます。

 一度仕事終わりにうっかりコンタクトを外してしまって、何も見えないのに、どうしても食べに行きたくて、町行く人に声をかけ、連れて行ってもらったこともあります。ラーメンに恋していますね。

 お持ち帰り用を家で作って食べることも。夜中の1時や2時でも、まず弟が「ラーメン?」と気付いて起きてくる。私がチャルメラの音楽をスマホで流すと母も起きてくる。仕事が忙しかったり、母が入院したり、父を亡くしたり……そんな余裕がない時期は、ラーメンは1人で食べるものでした。うちに限らず、ラーメンという伸びやすい食べ物を一緒に囲んで、誰かとおいしいねと言い合えるのって、本当に幸せだと思うんです。

 ◆住吉店 福岡市博多区住吉5の5の15の1階(問い合わせは092・471・0345)。
 オンライン、ファクス(510・1347)でお土産ラーメン(3食入り1296円)も購入可。


 きしだ・なみ 作家。
 車椅子の母やダウン症の弟、祖母と過ごす日々などをつづったブログのエッセーをまとめた新刊「傘のさし方がわからない」(小学館)発売中。ページ数の数字は弟の良太さんが担当した。

(2021年10月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)