文学座の下積み時代の20代後半、お店の近所にある祖父と祖母の家にお世話になっていて、よく連れて行ってくれました。祖父は天ぷらが好きで、いつも天付せいろを頼んでいました。
2週間ほど前、10年ぶりくらいにお店に行ったんです。その時、「宇兵衛そば」という名前が気になり注文しました。店主のご先祖様の名前が由来だそうです。ちらしずしのようなおそばで、煮た野菜や錦糸(きんし)卵、いくら、そしてエビの天ぷらがのっていて、ごちそう感がすごい。どこを食べても麺がのりまみれになるくらい、のりの量も多いんです。先週も行ったばかりなのですが、また、宇兵衛そばを頼みました。そのくらい好きな味です。
結婚前、祖父と祖母に夫を紹介したのもこのお店でした。夫は22歳年が上で、家族から結婚に反対されるだろうなと思ったんです。そこで、まず最初に祖父と祖母に紹介して安心してもらおうと考えました。その日は、4人で天付せいろを食べましたね。
私はあまり外食をしないんです。自分の味覚と合うものを探すのはかなり大変だなと感じるからこそ、この店は、私にとって稀有(けう)な店だなと思っています。
◆東京都豊島区高松3の5の17(問い合わせは03・5966・0075)。
2180円。
午前11時半~午後3時、5時~9時。
水曜休み。
ごのへ・まりえ 演出家。戯曲や童話も執筆。2005年、文学座付属演劇研究所入所。
演出を手掛けた2人芝居の舞台「毛皮のヴィーナス」(8月20日~9月4日、高岡早紀、溝端淳平出演)が、東京・三軒茶屋のシアタートラムで上演予定。