2006年に春風亭小朝師匠に入門してから約5年間、楽屋などで下働きをしながら落語の修業に励む「前座」だった時代に先輩方に連れて行っていただいて以来、大好きなお店です。
浅草演芸ホールから歩いて5分ほどの距離にある尾張屋さんの天ぷらそばは、そばが隠れるくらい大きなエビ天が二つものっていて、初めて見たときは、そばとはいえ「なんて高級なのだろう」と驚きました。寄席で朝から働き通しで、最後に食べさせていただく天ぷらそばが、本当においしかったのを覚えています。
われわれ落語家の間では、たとえその場に何人いようとも、「香盤」と呼ばれる落語家の序列が一番高い師匠がごちそうするという、暗黙の了解があるのです。前座時代は忙しく、お金も、時間もなく、よく噺の枕で「虫けら以下」なんてネタにするくらい大変な日々でしたが、先輩方のおかげでおいしいものを食べることができたので、舌だけは肥えていたなと、懐かしく思い出します。
昨年3月、真打ちに昇進し、主任(トリ)を務める公演を開催するまでになりました。今度は私が、先輩方から受けた恩を後輩たちに返していきたいと思っています。
(聞き手・高田倫子)
◆本店 東京都台東区浅草1の7の1(問い合わせは03・3845・4500)。
1700円。
前8時半~後8時。
金曜休み。
ちょうかろう・ももか 落語家。1981年生まれ。東京都出身。
10日まで東京・浅草演芸ホールの上席夜の部「桃組」公演に出演中(お問い合わせは03・3841・6545)。後4時40分~8時40分。全席当日券。大人3千円、学生2500円、4歳以上1500円。