天童荒太が「人が生きた愛と感謝の時間をたたえてほしい」と願い、書き上げた直木賞小説「悼む人」。映画化にあたり堤幸彦監督から、主人公・坂築静人の持つ独特の存在感と孤独な瞳を体現できるとばってきされた。
静人は縁もゆかりもない死者たちを悼みながら全国を放浪する。夫を殺した罪を背負いながら生きる女性(石田ゆり子)らとの出会いを通じ、生と死に真剣に向き合っていく。
最初は、なぜ静人が見も知らぬ死者を悼むのか理解できず、役の難しさに戸惑ったという。たとえば、静人が、殺された子どもの両親を目の前にして、自分は犯人を憎まないと伝える場面。静人の気持ちに共感できないままでは、演技に説得力が出ないのではと不安だった。
しかし、役と向き合ううちに、悼むという行動の意味は観客にゆだねればいいと気付いた。それからは、静人を演じるために考えた表情や瞬き、言い回しを「削(そ)ぎまくった」。あえて抑えた演技をすることで、静人の悼む心を自然に表現できるようになったという。
劇中で、悼むときの印象的なシーンがある。地にひざまずき、右手を頭上に上げ、何かをつかむように胸に当てる場面だ。インタビューの最後、その手のしぐさを見せてくれた。「悼むって、逝った人を忘れないでここに入れておくこと。その人を心の中で感じながら、ともに生きていくことがいちばん大切だと思う」
取材・文/石井広子
撮影/篠塚ようこ
プロフィール
こうら・けんご
1987年、熊本県生まれ。2005年にデビュー。その後、映画を中心に活動。今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」では高杉晋作を演じる。主演映画「きみはいい子」が初夏公開。
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