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あの「ベルばら」が韓国でミュージカルに

EMKミュージカルカンパニー提供

 人気漫画「ベルサイユのばら」を原作にしたミュージカルがソウルで上演され、10月13日にフィナーレを迎えた。韓国にも漫画のファンが多く、原作者の池田理代子さんが7月の開幕に合わせて来韓し、話題を集めた。

 舞台版の「ベルサイユのばら」は宝塚歌劇で1974年から上演され続け、今年50周年を迎えた大ヒット作。累計の観客数は500万人を超える。一方、韓国で今回上演されたのは宝塚版とは違い、新たに作られたミュージカルだ。王妃マリー・アントワネットを護衛する男装の麗人オスカルを主人公にフランス革命を描く筋立ては同じだが、オスカルに思いを寄せるアンドレをはじめ男性の登場人物は男性俳優が演じた。すべての役を女性が演じている宝塚版しか見たことがなかったので、逆に新鮮に感じられた。

 韓国では93年にアニメの「ベルサイユのばら」が放送され、最高視聴率28%を記録する人気を博した。30~40代の女性なら知らない人はいないほどだ。

 

 

 韓国版ミュージカルはワン・ヨンボムが脚本・作詞・演出、イ・ソンジュンが作曲・音楽監督を務めた。2人は「フランケンシュタイン」や「ベン・ハー」などを共に手がけてきた黄金コンビで、韓国の創作ミュージカルを牽引する存在だ。

 韓国版はオスカルとアンドレを中心に描かれた。アンドレはオスカルの幼なじみだが、オスカルは貴族、アンドレは平民で、身分違いの恋に悩む。そのほかの登場人物では、ジャーナリストで貴族から盗みを働く「黒い騎士」でもあるベルナールがクローズアップされ、配役表でもオスカル、アンドレに次いで3番手になっていた。

 一方、原作と違ってマリー・アントワネットはほとんど出番がなかったが、事情がある。韓国版「ベルサイユのばら」を作ったEMKミュージカルカンパニーは「マリー・アントワネット」というタイトルの別のミュージカルを手がけていて、それと差別化を図ったようだ。

 

キム・ジウのオスカル

 私が見た回はキム・ジウがオスカル役を務め、漫画から飛び出したような華麗な姿で客席を魅了していた。トリプルキャストで、アイドルグループFin.K.Lのメンバーでミュージカル界のスター、オク・ジュヒョンもオスカル役を務めた。韓国ミュージカルの見どころは何と言っても圧倒的な歌唱力。劇場いっぱいに響き渡る歌声に酔いしれた。

 

こちらのオスカルはオク・ジュヒョン

 EMKミュージカルカンパニーは今年、日本の漫画が原作のミュージカル「四月は君の嘘」も上演した。新川直司の同名漫画が原作で、東宝が2022年に初演した作品だ。今年6~8月のソウル公演ではロックバンドFTISLANDのイ・ホンギやイ・ジェジンが出演した。

 日本の漫画原作の韓国版ミュージカルで再演を重ねているヒット作は「デスノート THE MUSICAL」。アイドルグループJYJのキム・ジュンスが2015年の初演から出演し、日本から観劇に来るファンも多い。

 日本の漫画やアニメは韓国でも人気で、特に昨年は映画「すずめの戸締まり」(新海誠監督)と「THE FIRST SLAM DUNK」(井上雄彦監督)が合わせて1千万人を超える観客を動員する大ヒットを記録した。近年は日本の漫画のミュージカル化が増えており、原作ファンの多い韓国でも注目を集めている。

 

 成川彩(なりかわ・あや)

 韓国在住文化系ライター。朝日新聞記者として9年間、文化を中心に取材。2017年からソウルの大学院へ留学し、韓国映画を学びつつ、日韓の様々なメディアで執筆。2023年「韓国映画・ドラマのなぜ?」(筑摩書房)を出版。エッセー「映画に導かれて暮らす韓国——違いを見つめ、楽しむ50のエッセイ」(クオン)を今月刊行。

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